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総裁記者会見要旨(9月26日)

1999年 9月27日
日本銀行

―於・ワシントン
平成11年 9月26日(日)
午後 3時から40分(現地時間)
松島理事陪席

冒頭総裁から、昨日のG7後に配布したステートメントを改めて読み上げた後質疑応答。主な内容以下の通り。

【問】

ステートメント(1)の、「弾力的な資金供給」は、不胎化介入や何らかの量的ターゲットを想定したものか。

【総裁】

金融政策運営は、常に、情勢の変化に応じて適切に対応すべきものである。現在の政策スタンスも、ゼロ金利のもとで弾力的な資金供給を行いつつ適時適切に対応していくというものである。このように適時適切に対応していくという趣旨を昨日のステートメントは表している。

【問】

21日の公表文と昨日のステートメントを比べると、為替に対する姿勢が変化したように見えるが。

【総裁】

金融政策を為替相場のコントロールに直接割り当てないというのは、一定の為替相場水準そのものを目標にして金融政策を運営することは適切ではない、ということであり、金融政策と為替相場が無関係であるとか、重要でないということでは全くない。為替相場の変動は、経済や物価に影響を与えるので、金融政策は、為替の変動の影響も含めた総合的な判断に基いて行うことが必要だと思っている。21日の公表文で述べたのは、こういうことである。

【理事】

若干付言すれば、金融政策を行う上で「為替相場の変動も含め総合的に判断」することは、今までもそのように行ってきたし、今後も行っていく。その意味で、スタンスは変わっていない。

【問】

ステートメント(4)で調節手段の拡充を検討するとあるが、TBやFBのことを言っているのか、それともそれ以外のものにも拡充するということか。

【総裁】

21日の記者会見において、私は今後の中期的な課題として、金融調節手段の多様化を挙げ、何が可能かを執行部に検討するよう指示した、と述べた。最近、オペの札割れといった現象が増えていることにもかんがみると、弾力的な資金供給をより確実なものとしていくためにも、オペ手段の充実を図っていくことが重要だと考えている。具体的には、最近の短期国債市場(FB,TB)の充実といった市場構造の変化を踏まえて、オペ手段の充実を検討していくことになろうかと思う。

【問】

9月21日の公表文は、為替を金融政策の目標とはしない、追加的緩和はしない、といった否定的な表現が目立ったのに比べ、昨日のステートメントは、表現がソフトになっているが、その背景如何。また、為替の変動と政策運営の関係如何。

【総裁】

21日の発表文は、われわれの考え方を纏めた論文のようなものだったが、G7では私のように年をとった方が多いので、柔らかな言葉遣いとなっている。ただ、言っていることは21日と変わっていない。

繰り返しになるが、金融政策運営は、常に、情勢の変化に応じて適切に対応すべきものである。こうした方針のもとで、具体的には、ゼロ金利政策のもとで豊富で弾力的な資金供給を行いつつ、情勢を的確に判断して適時・適切に対応してきたつもりであるが、この点が必ずしも正しく理解されていなかった気がしている。

【理事】

最後に、不胎化介入の問題については、いろいろな誤解があるようなので、少し詳しく説明したい。

まず、日本銀行は、介入の一本一本について売りオペを対応させて、放出された円資金を機械的に吸収しているわけではない。いつも申し上げているように、日本銀行は、介入資金も含むさまざまな資金の流れを利用しつつ、オペレーションにより、市場全体の資金量を調節している。大事なことは、こうした介入資金なども含めて、全体としてどのような資金供給を行うか、ということである。

私どもは、一般財政資金であれ、介入資金であれ、「調節方針を実行する上で必要な調整を行う」という意味で、「不胎化」という言葉を使ったことがある。しかし、この言葉は、どうも、先ほど述べたように「介入資金の機械的な吸収」といった意味で使われることが多いようであり、そうであれば、日本銀行はそうしたオペレーションは行っていない。

日本銀行は、介入資金も含む多様な資金の流れを利用しつつ、ゼロ金利政策のもとで潤沢な資金供給を行ってきている。この点を、是非、正確に認識していただきたい。

以上