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政策委員会議長記者会見要旨(3月25日)

2003年3月26日
日本銀行

―平成15年3月25日(水)
午後2時15分から約35分

【議長】

今日は、臨時の金融政策決定会合に続き、通常会合を開催した。臨時の金融政策決定会合に関しては、主としてイラク情勢の展開を踏まえながら、当面の緊急対応について、既往の政策委員会の決定事項の枠組みの中で、執行部でかなり弾力的に対応してまいった──対策本部も設け、流動性の追加ということもやってきている──が、戦争が始まって以降、政策委員会の舞台で、きちんと対応を確認することが必要だというふうに思った。併せて、執行部がやってきたことに加え、追加的に必要な備えを政策委員会で決定して頂く、この必要を強く感じたということがナンバーワンだ。

同時に、イラク問題の対応にせよ、今後やや長期的に日本経済の将来を考えるにせよ、やはり引き続き日本経済の基盤はかなり脆弱だという前提で臨まざるを得ない。日本銀行も総裁、副総裁が3人とも代わり、政策委員会のメンバーとしても9人中3人代わったということなので、新しいメンバーで金融政策全体のフレームワークを再点検しながら、さらに良いものを目指して検討を進めていかなければならない。今日は、そのファースト・リーディングというか、最初の検討会議というふうな位置づけも持ったということだ。

決まった内容は、もう既に発表しているが、当面の情勢への対応としては、引き続き流動性を弾力的に供給していかなければならない可能性があるということで、期末を越えた後も、不確定な地政学的情勢という状況が続く限り、機動的に流動性を供給できる体制を整えた。それから、その補完的措置として、いわゆるロンバート型貸出──補完貸付制度と言っているが、0.1%の公定歩合で金融機関のリクエストに応じて日本銀行が信用供与をするという枠組み──に関する若干の制限措置──通常は、1か月に5営業日までという利用期間の制限──について、こうした地政学的不確実性が続いている間は取り払うことにした。

今後、やや長期的にみても、この難しい日本経済を対象に日本銀行がきちんと対応していくための検討──量的緩和ということを軸にしながら、さらにどういう工夫を加えれば、より多くの政策効果の浸透が図れるようなフレームワークを築いていけるのかという検討──も、今日から開始した。

特に力点が置かれているのは、一つはトランスミッション・メカニズム──政策効果の波及過程──—というものに磨きをかけていくということ。もう一つは政策の透明性の向上、こういうふうな点にポイントを絞りながら、今後議論を深めていこうということになっている。

それから、もう一つは通常会合で決めたことで、銀行保有株式の買入れ措置についての枠の拡大だが、従来2兆円であったものを3兆円に、1兆円増額した。日本経済の基盤が脆弱だと、残念ながらそう申し上げたが、それは様々な要因からそう言えるにしても、金融システムの健全性回復が遅れていることとも非常に深く絡んでいる。その点からいくと、株価変動が金融機関の経営に及ぼす影響が引き続き大きい。従って、今後とも、株価下落リスクが日本経済の弱いところにダメージをもたらす可能性というものは否定できない。そういう意味で、イラク情勢に端を発した今後の経済動向を考えたときに、単に流動性の供給やその補完措置としての貸付制度の整備だけでは足りない。やはり銀行が持っている株の売却をさらに促す、特にTierIを超えている部分の売却をさらに促していくことは有効だという判断の下に、こういう措置をとったということだ。

【問】

冒頭総裁からお聞きした内容と若干重複するかもしれないが、今回、臨時の金融政策決定会合という異例の手段を、しかも新たに総裁に就任されて実質営業日ベースで3日目という非常に早いタイミングで採られたわけである。しかも、昨日、金融政策決定会合を招集されたタイミングというのは、必ずしも株価とか為替市場をみると、さほど緊迫感もないようなタイミングだったと思う。あえてそのような手段を採られた理由、あるいは背景となった危機感、そう決めた背景について、審議委員等から異論などはなかったのか。また、臨時の金融政策決定会合を開くという手法を今後も多用するつもりがあるのかどうか、伺いたい。

【答】

ご質問の後段のほうからお答えすると、本日の緊急招集というのは、あくまでも例外中の例外であり、今後、この方式は基本的に採りたくないということである。従来通り、新日銀法の精神は、やはり政策運営の透明性の観点から、金融政策決定会合の日付は前もって決めて公示をしておく、マーケットもそれを意識しながら動くという仕組みになっているので、この仕組みは変えたくないということだ。

今回は、イラクの問題が、私の就任と同時に起こり──不幸なことが起こったということであり──、執行部だけで対応を進めていくのではなくて、期末を越えた後の対応について、やはり政策委員会のきちんとした判断がどうしても必要だというのが、決定的な理由である。

しかし同時に、ボードメンバー9人のうち3人が変わったという体制の下で、金融政策決定会合での今後の政策運営のあり方に関する最初の議論を、4月7日まで待つのが良いのか、直ちに始めたほうが良いのか、ということについては、日本経済の厳しい状況を考えれば、少なくとも議論は非常に早く始めたほうが良いと判断した。国会にも頻繁に呼ばれるという状況において、政策委員会の舞台での議論を踏まえないで、私が答弁し続けるということにも限界があると、先般就任記者会見をやらせて頂いた際に感じたこともある。

【問】

次に、先程おっしゃったように、今後は、今回の決定の延長線上で、金融政策運営の基本的枠組みについてさらに検討されるということであるが、特に、金融政策の透明性向上と金融緩和の波及メカニズムという点に重点を置くとされている。この辺をもう少し具体的に伺いたい。また、次の4月7、8日の金融政策決定会合で、その辺の具体策をまとめることを念頭に置いておられるのか。

【答】

透明性の確保・向上、それからトランスミッション・メカニズムである伝達径路の強化というものは別々の問題ではなくて、表裏一体になったものだと思う。つまり、日本銀行が、流動性を供給しても、その後の伝達径路というものが明確でなければ、自ずと政策の波及効果は、政策の透明性という観点から削がれることになってしまうと思っているので、表裏一体の問題として考えている。

従って、差し当たっては、伝達径路の目詰まりを少しでもほぐしていくということに重点が置かれていくと思う。具体的には、日本銀行が、オペレーションとか貸出の時の担保に関して、どのような道具立てを使っていくのかということを幅広く検討したい。そして、取り上げ可能なものから、早く具体的に取り上げたいという姿勢である。

透明性確保のほうについては、それが基軸であるが、やはりより幅広く検討していきたい。日本銀行がやっていることについて、わかり易い説明という工夫をもっと向上させるといった極めて当然のことも含めて、幅広い検討をしたいということである。

【問】

総裁が、金融緩和の波及メカニズムという点に着目される背景として、おそらく、この2年間進めてきた国債購入を柱とする資金供給では、なかなか実体経済に資金が流れにくい状況になっているという問題意識があるかと思う。そうなると今後、いわゆる長期国債買い増しを軸に市場に資金を供給していく手法とは、徐々に一線を画していくというご意向なのか。

【答】

従来からも効果が著しく出ている部分がある。やはり、金融市場の安定化効果というのは非常に大きくあったというふうに思う。ショックが起こった場合に、金融市場で不安感が増幅するというような悪影響は完全に遮断していたというふうに思う。実体経済には全く良い影響がなかったかというと、そうではない。デフレ的状況がずっと続いているが、物価と経済のシュリンク(収縮)という循環が、いわばデフレ・スパイラルといったかたちで目に見えて増幅していくというふうな、悪い動きを目下のところは阻止している。従って、実体経済に対してもプラスの影響はやはりはっきり持っていると思うが、我々の目指すところはより積極的なことである。さらにプラスの効果を出していきたい──マネーサプライに対してもプラスの効果があり、実体経済もよりダイナミックなものにしていくという、そこのところにまで波及効果を及ぼしていきたい、そこに挑戦していきたい──という意味であって、従来の延長線上の一つのエボリューション(進化)を図りたいということである。

【問】

本日の政策委員会・通常会合のほうで決められた銀行保有株式買入れ枠の拡大であるが、従来、日銀は、2兆円という枠のうちまだ1兆円程度余っていることを理由に、その枠を拡大する必要性は薄いという趣旨の説明をされていたと思うが、その従来の説明との関係をまず伺いたい。また、いわゆるTierIを超える6兆円部分で、日銀が2兆円、政府の買取り機構が2兆円、残り2兆円が市場売却というおおまかな目安を描いておられたと理解しているが、その辺の目安というものが日銀として変わったということなのか。さらに、銀行保有株式買入れ枠が増すと、日銀が抱えるリスクも増すと思うが、日銀の自己資本面での対応ということについては別途考えておられるのか。

【答】

日本銀行の銀行保有株式買入れ枠の消化状況については、私が着任してまだ本当に数日なので、当初の想定よりも早いとか遅いとか、私自身には判断する能力がないが、当初からこれに携わってきた行内の方に聞くと、当初の予想に比べると少し早いペースで進んでいるということだ。一方、申し上げにくいが、政府のほうの買取り機構については、先程の割り振りのような感じには買取りが進んでいないというようなことがある。それは事実であるので、それを前提として踏まえながら、基本的な考え方は、TierIを超える部分を、とにかく銀行としては早く消化してもらいたいということだ。これは、ある意味で、システムに対して打撃を及ぼすリスク・ファクターであるから、早く消化してもらいたい。そういうふうに考えると、当面、政府のほうの対応がまだ若干の時間を要するかというような状況の下で、日本銀行があと1兆円増やせば、TierIを超える部分の消化というものがかなりの程度、あるいはほとんどこれでまかなえる、と判断した。従って、これは従来の枠組みを超えてはいない。ただ、少し日本銀行が役割を多く受け持つことになるかなという判断もあったが、当面の情勢に対応するために、日本銀行としては当然対応すべきことではないかという判断が勝ったということである。当然、リスクを背負うことになる。従って、自己資本のアロケーションという意味では、この部分により多くを割り当てなければならない。今後違ったことをやっていく場合の資本の割り当てが少なくなるということも計算に入れた上で、あえて踏み切っているということである。

【問】

今回のような臨時会合を、今後も開催するお考えはあるのか。

【答】

これについては、全く従来と同じように、原則として開催する考えはない。極力通常の公示した日に、金融政策決定会合をやっていきたい。あくまで今日がほとんど唯一の例外と思って頂きたい。

【問】

市場の反応だが、午後に入って株価がかなり値下がりしている。これについてどうお考えか。

【答】

おそらく昨日、あるいは厳密に言うと日本時間の昨夜、米国の株式市場でかなり値が下がった。そのこと自身が何故かという点については、正確にはまだ分析が行き届いていない。しかし、あくまでその直前までの、内外の株価の回復は、まさにクリアー・カットにイラクとの戦いが短期決戦に終わるというシナリオを、目一杯含んだ相場の動きだったと思う。

テレビの画面等で報道されるいろいろなシーンを見て、必ずしもそのシナリオが崩れたと、マーケット関係者がみているとはまだ思わない。しかし、100%完壁かというと、そうではないと感じられるシーンがいくらか報道されれば、多少影響される、あるいはずっと何日も続けて買い進んだ投資家としては、若干コレクションを入れたくなるといったようなことがあるのかもしれない。

従って、短期シナリオが崩れて株式相場の基調まで変わった、その兆しだとまではみられないと思う。しかし、昨夜の下落幅はかなり大きかったので、内外の市場に影響を与え、日本の市場にも相応のインパクトを与えていると理解している。

【問】

午後に日銀が買入れ枠の増加を発表した後、株価の下げ足が速まったと思うが、それについてはどうお考えか。

【答】

日本銀行のやることについて、残念ながら若干事前の報道もあった。従って、この部分は既に織り込まれて、午前中の相場をかなり下支えしていたものと思う。材料を全部消化した後の動きは、海外の下落の影響が比較的ストレートに出やすいということではないかと思う。

【問】

発表文の4.の今後の政策の再検討というか、点検作業のことであるが、政策波及メカニズム、加えてETF購入とかREITの購入とか、外債購入とか、あるいはインフレ目標の導入といった、いろいろ政府・与党の間で議論されている個別のテーマについても論点整理をされて、その点検作業の中に含めるおつもりなのかということと、そうした報告は、日本銀行の中だけで行われるのか、あるいは我々にも透明性向上の観点から、いろいろとお知らせ願えるのか、その辺はどうお考えか。

【答】

幅広い観点からということであるので、あらかじめ何かの項目をルールアウト(排除)して、ある範囲を限定して、ものを考えるということではなくて、なるべく幅広くカバレッジをとりながら、論点整理をしてもらいたい。それに基づいて、政策委員会できちんと議論をしたい。今日は論点整理がないまま全く裸で、既にそういう議論のファースト・ステージが行われていた。その内容は議事録というか、そのディスカッション・サマリー(議事要旨)が公表されればおわかり頂けると思うが、次回以降も全く同様に、議論の概要は全部公開していきたいというふうに思っている。

【問】

銀行株の買取りについて何点かお聞きしたい。前回の発表が昨年9月で、今回が3月末ぎりぎりの発表ということで、少なくとも外からみると、明らかに株価の下支えを狙っているとみられても仕方がないと思う。その点についてどうお考えか。次に、TierIの部分まで頑張れればということだと思うが、TierI以内の部分だけでも銀行はかなりの額の株式を持っており、株価の変動がかなり経営に影響すると思われる。その意味で、日銀は今回3兆円に引き上げたが、こういうように株価が下がっていくごとに買取り額を引き上げれば、日銀が株式の買取り機構化する懸念が強まると考えられる。この点如何お考えか。

もう一点は、日銀法の第43条但し書きを今回も使ったわけだが、これほど頻繁に使うと、もともとの日銀法の趣旨とは異なり、ある種「何でもやれる」ということになりかねない。その点は如何お考えか。

【答】

昨年が9月末だったというのは、今の質問でリマインドさせて頂いたぐらいであり、それは偶然ではないか。今日の政策委員会でも、期末の株価対策という誤解を生まないかという心配をされる委員が複数いた。私自身も、そういう誤解を招くことは好ましくないと思っている。思っているが、日本銀行としては、必要なことはやはりやらなくてはならないということであるし、特に先程も申し上げたとおり、日本経済の基盤は脆弱である。その脆弱であるいくつかの要素の1つが金融システムと株価の変動とが絡み合っているということであるので、このリスク・ファクターの部分に対して緩和剤を用意しておくということは、イラクの問題を頭に置いても、あるいは、もっとファンダメンタルズとしての日本経済の弱点ということを考えても、必要な措置であるという判断であり、あえて誤解をおそれず打ち出しているということである。

それから、財務大臣(および金融庁長官)の認可を受ければ業務範囲を広げられるのか、日銀法で本来規定されている通常業務の範囲をいくらでも超えられるのかというと、それは必ずしもそうではないと思う。やはり、経済の置かれた現状、あるいは将来展望に則して、日本銀行がやるのが適当かどうかという判断は当然政策委員会で行うが、このように発表して国民の皆様からそのことも確認して頂きながらやっていくということで、大きな歯止めになると思う。それから、これは国会でもお答えしたが、日本銀行法で通常業務として書かれているいろいろな業務を良くみてみると、やはり日本銀行というものは基本的にリスクの少ない資産を対象に健全通貨を供給するという仕組みにはっきりなっている。認可を得て、業務の範囲を広げれば広げるほど── 一概には言えないが──、傾向としてはよりリスクの高い資産を対象に、日銀の業務を展開して通貨を供給していくということになるので、そうなると日本銀行の持っている自己資本の制約──もう1つのバインディング(縛り)──も視野に入ってくる。従って、認可を受ければ日本銀行の業務は無限に広げられるということではないと考えている。

銀行のTierIの件はなかなか難しい。TierIを超える部分だけを解消すれば株価変動リスクが銀行経営に及ぼす悪い影響──ひいては日本の金融システム全体に対する悪い影響──が、完全に遮断されるかというと、個人的には極端に言えば、銀行保有株というものは一掃する位のところまで持っていかないと、その懸念が完全に払拭されるということはないかもしれないと私は思っている。というのは、大きく捉えれば、日本の資本主義が株式の持ち合い構造というものをしっかり背中に背負って円滑にワークする仕組みから、むしろ持ち合い構造を許さない資本主義へと大きくシフトしつつあるということが基本的なバック・グラウンドにあるし、金融システムのほうだけから言えば、株式を金融機関が持ち続けていると、株価変動リスクが、ただでさえオーバー・バンキングや不良債権問題の処理という重い負担を背負っている金融機関の背中をさらに突くという問題もある。

本当を言えば、私はきれいさっぱり銀行保有株式は早く整理したほうが良いのかもしれないと個人的には思っているが、しかしそれを日本銀行の買取り措置で全てカバーすることは不可能だと思う。従って、このことが本当に必要かどうかという判断は、もっと広く国民的に決められなければいけないことだし、必要であれば、それこそ政府の買取り機構がもっと力を出して欲しいという、そちらのほうのロジックにつながっていくということになる。

【問】

長期国債の買取り増額に関して、先程、過去の買取りはそれなりの効果があったということを認めつつも、今回あえて見送っておられるということは、国債の買取り自体を考え直す時期にきているという見方なのか。

【答】

「今回あえて見送った」とおっしゃったが、今回は金融政策のフレームワーク全般の最初の議論を始めたということであり、個々のアイテムについて、具体的な結論めいたものにまでは、まだほとんど至っていない。

ただ、オペレーションの手段の拡大という点について、少し議論が集中した感じがある。そういう点からいくと、国債買入れということを軸にしながらも、オペの手段の多様化という点については、政策委員方の関心が少し焦点が合ってきているというふうな感じはある。国債買入れをあえて否定するとか、これをディグレード(低く位置づけ)しようとかいうふうな感じの議論には今日のところは至っていない。

【問】

発表資料の4.のところの具体的な措置として、「議長は、金融政策決定会合において、企業金融や金融調節の面においてどのような措置が考えられるか、準備が整い次第、報告するよう執行部に指示した」というふうにある。前回の就任会見でも、「必要な措置は機動的に対応する」というふうにおっしゃられていると思うが、その文脈からすると、こういうものが報告された場合、必要となれば直ちに日銀として次の金融政策決定会合でも動くというお考えがあるのか。具体的には、政府から要求が出ているいろいろなリスクのある資産を買うことについて、直ちに検討するようなお考えがあるのか。端的に言えば、それに向けて日本銀行として検討すべきとのお考えをお持ちなのか、お伺いしたい。

【答】

発表文、特に4.の中で、比較的具体性をもって書いているのは、企業金融や金融調節の面においてどのような措置が考えられるかということであり、わざわざ「具体的措置として」と書いている。従って、この点について執行部から金融政策決定会合の場に材料が出てきて、政策委員会のメンバーとして、「これは取り上げ可能だ」というふうな判断に至れば、速やかに取り上げる腹積もりでいる。

不十分であれば、追加注文を出しながら、あるいは自分で考えながらそこは補正をしていかなければいけないと思うが、完成度の高いものであれば、政策フレームワークの中に早く取り込んでいく姿勢で臨んでいる。

特に、中小企業関連の金融資産をオペレーションの対象に取り込んでいくということが、私の観察している限り——事務当局において、これまでの研究とか勉強の蓄積がある程度あると一応確認しているので——、一番早く出てくる可能性があるというふうに思う。

【問】

それはABCPなどをイメージしているのか。

【答】

そこまではっきり断定して良いかどうか分からないが、ひとつのイメージとしておっしゃるとおりである。

【問】

今現在、銀行保有株の買取りで生じている含み損はいくらか。また、本日の通常会合の多数決の賛否は何対何だったのか。それから、つい半年前には2兆円を歯止めとすることで合意していた人が3兆円を認めるというのは、どのように理解したら良いのか。また、この先4兆円や5兆円でも「TierIを超えれば買い取れる」ということであれば、生命保険会社が一旦銀行に株式を売り、それを銀行が日銀に売ればマーケットに影響を及ぼさずにどんどん売れるわけで、どんどん買取りが増えるおそれがあるが、歯止めについてはどのように考えているのか教えて頂きたい。

【答】

日本銀行として、この3兆円という枠をさらに超えてやっていけるかについては、先程申し上げたとおり、「資本の割当」という点から考えてもほとんど不可能だろうというふうに考えている。

賛否については、多数決であった。反対意見は確かにあった。

含み損については、決算期末に公表することとなっている。それ以外のタイミングで含み損益を公表することは考えていないということである。

【問】

総裁の一存で公表するというのは如何か。

【答】

着任して間もないことから、含み損の数字については確認していない。申しわけない。

【問】

反対は何票か。

【答】

9人中7対2である。

以上