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総裁記者会見要旨(10月1日)

G7終了後の谷垣大臣・福井総裁内外記者会見における総裁発言要旨

2004年10月2日
日本銀行

―於・ワシントンDC
平成16年10月1日(金)
午後9時30分から約40分(現地時間)

冒頭発言

 世界経済について、2005年は、成長率自体は今年と比べると少し下がるかもしれないが、引き続きバランスのとれた回復が続くということが確認された。日本経済については、自律的な回復力を強めながら回復が続くということを、私自身もご報告をしました。また、物価の面では、生産性の上昇と賃金の調整が続いているという状況のもとで、最終的な物価、すなわち消費者物価の上昇圧力は、引き続き遅れ気味に加わっている。こういう状況ですので、日本銀行としては、引き続き現在の量的緩和を堅持するということを報告しました。なお、日本経済については、4-6月期に成長率がやや期待を裏切る数字が出ているわけですが、回復の基調は変わっていない。その点は、本日発表された短観で、企業家心理は引き続き良好で改善しているということによっても、裏付けられていると併せて報告しました。

 なお、中国との非公式の会合については、これまでも中央銀行の総裁間では、比較的フランクな話合いが行われていますが、財務大臣も交えて、全体としてこういうフランクな意見交換が持てたというのは非常に意義が深かったと思っています。中国のほうも、非常に率直な話をなさったと私は感じておりまして、短期的に中国経済をソフトランディングさせるということに加えて、より長期的に中国経済の仕組みを市場メカニズムを活用する方向に持っていくという方向性を持った話も、率直にしておられました。

(以下質疑)

【問】

 中国との会合が非常に有益だったとおっしゃいましたが、中国の過熱化している経済を持続可能なものにできるかどうかという点について、今回の話合いの結果として、総裁はより確信、自信を持てるようになったのか伺いたい。また、持続的な経済にするために人民元の弾力化が必要だと思うのですが、スノー米財務長官の記者会見ではちょっとご不満のような発言も聞かれたとのことです。この点についてご意見をお聞かせ頂きたい。

【答】

 今日は、中国の財務大臣と中央銀行総裁のお二人が揃ってお話をなさって、ソフトランディングに向けての必要性、そして中国当局として採ろうとしている政策対応に関して、ものの考え方に非常に一貫性があるというか、不一致がないという印象は強く受けました。先進国のように全面的に市場メカニズムを活用しながらのマクロ政策の展開ということになっていないので、きちんとシミュレーションをして、それを擦り合わせしながら、総体としての効果がどのようになっているか確認し難いという点が、中国経済に伴っています。そういう意味では何回話を聞いても、最終的に確信をもつというところまでは、率直に言ってなかなかいかないところです。しかしながら、私自身が感じましたのは、中国の政策当局は、問題をきちんと認識していて、呼吸を合わせてやっておられるという点からみて、印象としては、ハードランディングはすぐにはなく、どちらかと言えば、ソフトランディングか、その一歩手前となっていくと考えています。概ねそういう方向に向かっているのかなという印象を受けました。

 それから、為替相場のフレキシビリティの話ですが、今申し上げましたとおり、中国においては、フレキシブルでない部分は、為替だけではなくて、その他いろいろな面があるわけです。投資、雇用、金融取引、あるいは資本取引にしても、為替相場のフレキシビリティ実現により狙う効果を挙げるためには、全体として市場メカニズムを活かす仕組みというものが広がっていかないと本当の効果が出ないということは、非常に明確です。その点について、中国の政策当局は問題を正しく認識しており、少し時間はかかるが、そういうふうにはなるのだろうと思います。

【問】

 「少し時間はかかるけれども」というのは、中国側からそういう発言があったのか。

【答】

 いいえ、それは私の受け止め方です。

以上