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水野審議委員就任記者会見要旨(12月3日)
2004年12月6日
日本銀行
─2004年12月3日(金)
午後5時から約30分
(審議委員)
本日付で審議委員に就任した水野と申します。今まで日本銀行というものを外から見ていた人間が中に入って意見が変わったというと怒られるが、多少物言いが変わってくるかも知れない。ただ、なるべくフランクに正直に、もし日本銀行と自分の考えに違いがあればできるだけわかりやすく言っていこうという点は変わらない。従って、今までマーケットにいた時に言ったことから急に意見を変えることはないと思う。ただ、基本的に日本銀行の考えているスタンスは押えて話をさせてもらうので、多少歯切れが悪くなるところはご容赦頂きたい。
今まで日本銀行を外から見ていたマーケット参加者が、こういうかたちで政策委員会メンバーとして入っていくことについて、私が適任かどうかは本当にわからないが、今回引き受けた一つの理由は、マーケット参加者が一人入っていくのも悪くないかな、という思いである。これからもこういう人間が入れるように、私がつまずいてしまうとまたそういう道が途絶えてしまうので、しっかりやらせてもらえればと思う。
【問】
今、審議委員になられて、マーケット参加者としての立場で日本銀行の金融政策を見ていこうという言葉があったが、審議委員となった抱負をもう少し詳しくお聞かせ頂きたい。
【答】
特に気負ったところは何もない。今まで通りやっていこうと思っているし、幸いほとんどの政策委員会メンバーの方とも面識があるので、特に緊張もしていない。本当は緊張しなければいけないのかもしれないが。
マーケットのメッセージをもう少し政策委員会の中でも言っていきたいと思っている。特に、今年のマーケットを見ているとボラティリティが非常に低いが、これは決して良いことではないと思っている。例えば、クレジット・スプレッドが非常にタイトになっている、あるいは債券市場が動かない、株価も動かない、為替もちょっと年始に動いてまた足許は動いているが、基本的に落ち着いている。こういう時には、その後に何か大きな動きが起きることが多いので、きめ細かく見ていく必要があるというのが今の気持ちである。
政策のほうで今は特に大きな変化がないというのが大方の予想だが、逆にマーケットを見ていて、だから安心して良いのかというとたぶん違うと思う。そういう点について、少しマーケットの視点で、クレジット・スプレッド、イールド・カーブの形状、スワップ・スプレッドといったテクニカルな用語も議事要旨に出てくるかもしれないが、そういうものから発せられているマーケットのメッセージを伝えていければ良いかなと考えている。市場のフォーカスがどんどんシフトしている中で、淡々と株価、債券市場を見ていくだけではなく、今マーケットは何を注目しているかということに気をつけていく必要があるし、それをまた将来の政策に反映されるようにメッセージとして出していきたいと考えている。
【問】
これから日銀の金融政策決定の中核メンバーとして活動されることになるわけであるが、金融政策の中で最も関心が高い量的緩和の出口論について、現在の量的緩和の解除の時期であるとかその手法についての見解を伺いたい。
【答】
量的緩和を始めてもう既に4年近くになってくるわけで、緊急避難的な措置で始めた量的緩和政策であるが、当初の目的は基本的に達してきているのかなと思っている。これはいろいろな評価があるが、金融システムの安定化、それからおそらくデフレ・スパイラルの回避という点では、もはやある程度必要性は足りたのかなと思っている。
おそらく量的緩和の解除の議論になってくる時に、国債市場の安定化という意味で国債管理政策との絡みが出てくるが、これは対立するようなものではなくてお互い歩み寄って行かなければならないところでもあると思う。それから量的緩和の解除という作業の後におそらくゼロ金利政策へのシフト、かたちとしては量的ターゲットから金利ターゲットへのシフト、それに伴って非常に速いタイミングで当座預金残高は減っていくということが想定される。その後に金利を上げていく作業のところにおそらく長期国債買入れオペをいかに減らしていくかという債券市場にとっては非常にナイーブな議論が出てくる可能性が高い。
それからもう一つ、量的緩和政策の副作用についてである。今までは量的緩和の副作用よりもメリットのほうが大きいということで動いてきた──日本銀行の基本的な立場は私も理解しているところである──が、一つの副作用として言えることは、金利が低いということもあるが、金利が動かないことを前提に世の中の金利体系が決まってしまっているということである。例えばいろいろな仕組み債がどんどん人気化して、それが地域金融機関に買われていく。あるいはボラティリティがないことが将来の大きな変動をもたらすということも起きてくると思う。従って、量的緩和というよりも、同じ政策、特に量というものをターゲットにした異例の政策を続けることをなぜ続けていくのか、あるいは景気刺激効果ということを考えた場合にゼロ金利政策との違いは何なのか、ということを突っ込まれた時に、なかなか微妙な判断を迫られてくると思う。
これに対して、私なりの意見を言えば、今の日銀のスタンスは理解できるが、そろそろ今の枠組みの限界というか、枠組みの弊害みたいなものも意識しながら政策を動かさなければいけないのではないかと考えている。もちろん、日銀が昨年10月にコミットした量的緩和の3条件を理解した上でお話しているわけであるが、例えば環境が変われば政策の枠組みも変わってくるはずであると考えているので、これについては、これから日銀の中でもいろいろ議論させて頂きたいと考えている。
【問】
今の説明の中で、量的緩和の当初の目的はある程度達成したということであったが、量的緩和の出口を探る具体的な時期のイメージはどうか。
【答】
これは明らかに景気・物価指標を見ていくしかないと思う。基本的に日本銀行のスタンスと同じである。その中で、これからしっかり見ていかなければならないところは雇用・所得環境である。ここはキーになってくると思う。
企業部門の環境は非常に良くなってきている。おそらく設備投資が一時的に落ち込んでも、再び回復してくることは本日公表された法人企業統計を見ても明らかである。多少GDP統計と法人企業統計の差はあるが、企業部門については企業が過剰債務あるいは過剰設備の削減に上手く成功して、ある意味でバランスシート調整が終わって、次はいかに収益を上げていくかという局面に入ってくると思って見ている。
財政面では、定率減税の見直し・縮小の話が出ているが、大きく言うと財政政策のほうは変わらないとすると、あとは家計部門にどういうふうに明るい話が出てくるかということだと思う。今、私が見ている統計の中で注目しているのは、例えば有効求人倍率やボーナスの動き、それから残業時間が増えているかどうかといった点である。この辺の統計は日本銀行も注目しているところだと思うが、よく見ていく必要がある。海外景気の問題については、例えば、ITセクターの在庫調整の動きについても、私は基本的にある程度楽観的に見ているのでそれほど心配していない。
景気については、足許減速してもその後は回復していくということなのだが、気掛かりな点は市場参加者の視点がどうしても短視眼的になってきていることである。市場参加者は足許から3か月先を見ていくような感じであり、どうしても短視眼的になりがちなのが最近のマーケットの特徴である。日本銀行のメッセージは、半年から1年、場合によっては1年半にかけての見方を——それ以上先というのはなかなか難しいと思うが——出していくということで、そこを強調していきたいという感じがしている。
それから、海外景気のうち中国については、私はソフトランディングもハードランディングも当てはまらないと思っており、おそらくノーランディングだろうと思って見ている。一番気にしているのは欧州の景気であり、最近はドイツ経済を中心にかなり低迷感が出てきている。その中で政策面の行き詰まりという意味では、FRB、日本銀行、ECBと見ていくと、ECBのほうが、現在、非常に難しい局面を迎えているのかなと感じている。
日本銀行の場合は、構造調整圧力の緩和の中で、少し景気循環的な明るいものが見えてきているので、構造改革に対応した政策の枠組みから景気循環に合わせた政策の枠組みに変えていく準備をそろそろしていく必要があるのではないか。景気循環の局面で今どこにあるかということを、もう少し市場参加者に言っていく必要がある。そうしないと、足許の統計が強い、弱いという議論で景気に対して弱気、楽観的という話が出てきてしまう。市場参加者との景況感の共有という観点からすると、多分市場の見ている期間のほうが日本銀行よりも相当短くなってきているというのが、今感じているところである。これは自分が市場にいたということもあって、その辺はよく理解しているつもりである。
【問】
3点お尋ねしたい。まず第1に、「昨年10月に公表した3条件を理解した上で、環境が変われば政策の枠組みも変わってくる」と先程おっしゃったが、これは景気・物価情勢、あるいは世界経済の先行きに変化があるようであれば、この3条件の枠組み自体も変えたほうが良いのではないかという指摘なのか。第2に、「ECBが難しい局面に立っている」という点をもう少し具体的に説明して頂きたい。第3に、当座預金残高目標である30~35兆円のレンジの中で資金供給を維持することが、なかなか厳しくなっているのではないかという指摘が市場の中で消えていない。オペの仕方も大分変わってきて、昨日などは、短国の買い切りをわざと入れなかったのではないかという感じもある。こうした中、緩和の方針だけは残しておいて、調節の自由度を高めるために目標レンジの下限の30兆円を27兆円とか26兆円に下げるということはあり得るのか。
【答】
「3条件」については、日本銀行が昨年コミットしたところであり、今の日本銀行の政策の基本的な枠組みは言わずもがなである。これが達成されるまでは基本的には今の枠組みを変えたくないということは私も理解している。
ただ、先程も申し上げたように、量的緩和政策を導入した当時の経済環境が変わり、所期の目的が達成された後に、日銀自らがある意味で異例あるいは異常として緊急避難的と認めているような政策を続けることが、説明責任の観点から正しいかどうか。将来かなり先になってからだと思うが、量的緩和政策の枠組みを導入したこと、あるいはこれを続けたことが、結果的に正しかったかどうか、これは非常に注目すべきことだと思う。
先程も少し触れたが、私が非常に気にしているのは資産インフレの問題である。例えば、クレジット・スプレッドがタイトになっているが、これは実は量的緩和の1つの副作用ではないか。実際の価格が必要以上に割高になっている可能性があるのではないか。それから、もう一つの弊害としては、例えば、不動産のマーケットが非常に割高に取引されており、これも一つの資産バブルの兆候なのではないか。
低金利政策を続けた後には、一般物価が上がらなくても、必ず何らかの資産価格が──今はおそらく局所的だとは思うが──ある意味で「バブル」と言われるような状況になるということは、実は後になってからでないとわからない。
フォワード・ルッキングな政策ということを言うのであれば、中央銀行は──企業から直接ヒアリングしている分だけ、データは市場参加者よりも多少持っているとは思うが──、今見えている弊害と今マーケットが語っている将来にわたる問題点についてしっかり見ていく必要があると思う。
質問に対するお答えとしては、「3条件」を変えるときには、相当時間をかけて丁寧に説明していく必要があるが、債券市場に参加していた者の一人として思うことは、この説明を上手くすれば、量的緩和の「3条件」の枠組みを変えても、おそらく日本銀行にとってはがっかりするくらい債券市場はクールな反応を示すのではないかとの感触を持っている。ただ、日本銀行の説明責任の観点から、一度コミットメントしたことを変えることは如何なものかという議論と併せて考えると、非常に慎重な議論が必要であり、時間をかけて議論をする必要があると考えている。
2番目にECBの政策についてだが、ECBもやはり物価の安定という問題を抱えている。原油価格が上がり、ユーロ高が強まっている中で、おそらく本来であれば景気に対して刺激的な金融政策、すなわち金融緩和を行うべきだが、実際にはインフレ・ファイターという立場を変えていない。
こうした状況は10年前の日本のマーケットを見ているような感じがする。これは日本銀行にとっても苦い経験だと思うが、例えば1994年の秋に日銀は高目誘導を行い、他にもいろいろなことが重なったわけであるが、その結果として1995年には円高が一気に進んだ。ちょうど今は、ユーロ高になっている──特に欧州の景気が悪いと言われている中で通貨が強くなっている──わけだから、マーケットのシグナルは、おそらく、「金融政策が後手に回っている。本来あるべき姿からすると、政策は引き締めすぎている」ということなのだと思う。債券市場でイールド・カーブがブル・フラットニングしていくということのメッセージは、おそらく、「中央銀行の政策は間違っており、今の引き締め気味な政策を採るといずれ景気は減速してしまう」ということであり、そのために長期金利が下がっているのだと考えている。
ECBには、おそらく、財政規律を求めるためにインフレ・ファイターぶりを示す必要性──特に、財政規律がない国々に対してメッセージを送りたいということ──と、自ら課したインフレ・ファイターとしての目標であるコア・インフレ率が2%を超えているという問題がある。その辺の立場はわかるが、ユーロ高の問題は、実はフラストレーションがたまっているわけで、現在ECBは本音をなかなか言いたくとも言えないような状況に置かれている。そこの矛盾をマーケットがユーロ高、欧州の長期金利の低下というかたちでまさに現しているのかなと考えている。
3番目のオペの問題については、幸い、当座預金残高目標である30~35兆円の資金供給が難しい局面はちょっと山を越えたかなと思っている。これから1か月半ぐらいは30~35兆円の資金供給についてはそれほど問題ない局面なのかなという気がする。ただ、より重要な点は、この30~35兆円の資金供給を続けることの意味だと思うし、この点については先程説明した通りである。
もう一つは、30~35兆円という目標の下限を例えば27兆円というように下げていくことをどう思うかという話だが、量的緩和の拡大後に、量的緩和の枠組みの中で量的なターゲットを引き下げていくと、市場は、次の一手としておそらく量的緩和の枠組みの解除、それから将来の短期金利の上昇を織り込んでいくであろうから、おそらく量と金利を一緒にコントロールすることは不可能であると考えておいたほうが良いと思う。
例えば、量的緩和の枠組みを維持しながら、数兆円目標額を下げるというのは可能であると考えられるかもしれないが、おそらく市場参加者が先行きの金利の引き上げを予想すれば、当座預金残高にお金を積むことをおそらく意味のないものと考えているので、当座預金残高目標の位置付けはまた難しくなってくる。結果的には、当座預金残高目標の引き下げというものは、金融政策の先を読むマーケットのさらなる動きの中で、当座預金残高目標のさらなる引き下げに追い込まれることになる。従って、理論的には──机上の議論としては──可能かもしれないが、現実に予想されるマーケットの動きからすると、テクニカルな面で非常に難しいのではないかと考えている。
【問】
今の量的緩和の解除の3条件に関連して、もう少し伺いたい。要するに3条件というのは、大きく言えば消費者物価指数である種の縛りをつけていくということである。水野さんは、最近のレポートなどでも、消費者物価指数というのは、景気の遅行指標であって、それにあまり縛られた金融政策するのは、ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクがあるという論陣を張られていたと思う。そういった考えは、日銀に入られても変わらないか。今後もそういった主張をされていくということでよいか。
【答】
ビハインド・ザ・カーブを承知で今の枠組みを続けているという発言は、その他の審議委員の方からも出ている話であり、それ自体は、日本銀行も理解しながら今の政策を続けてきていると考えている。私の理解では、量的緩和の枠組みというのは、ある意味で構造改革、構造問題に対する対応、先程お話した不良債権問題、あるいはデフレ・スパイラルのリスクに対する緊急避難的措置である。だから、多少のビハインド・ザ・カーブのリスクは承知で行っていると考えている。ただ、ビハインド・ザ・カーブのコストが、デフレからインフレにすぐなるならともかく、デフレからせいぜいディスインフレの世界になる程度であるなら、大きな問題はないのではないかというのが、政策委員会の基本的な考え方として、たぶん今の政策枠組みの大きな根底にあるのではないかと思う。
私自身は、その先をもう少し見ていて、量的緩和を続けることがビハインド・ザ・カーブになる、その結果、資産価格が──これは広い意味で、いろいろな資産価格、先程お話した社債の価格、あるいは長期金利も下がり過ぎているとか、いろいろなことがあると思うが──、将来、なんらかの政策変更を伴った時に──金融引き締めということになるが──非常にボラタイルな動きをもたらす可能性がある。従って、資産価格の安定という観点からすると、若干、将来に問題を残してくるのではないかという懸念を持っている。
【問】
先程審議委員に就任した抱負の中で、マーケットのメッセージを伝えることが1つの役割だと認識されているとおっしゃっており、私もその点に非常に期待を持つが、過去の日銀の金融政策運営を振り返った時に、マーケットのメッセージが上手く伝わらなかったゆえに不都合が生じたようなケースについて、例えばどういうところを外からご覧になっていたのか、具体的に伺いたい。
【答】
こうした立場になると言い難いが、例えばマーケット自身も超低金利政策が続くがゆえに、金利が上がらないことを前提に物事を考えている人が多い。ある意味で、将来の政策を考えることが無駄である、だから債券運用において将来の金利上昇をあまり考えなかった。その結果、債券相場は昨年急騰した後に急落したということが起きているわけである。
そういった意味では、例えば今年──足許、長期金利は放っておくと金利が下がりやすい環境にあると思うが──、景気が減速してくる、足許の景気指標もどちらかというと失望的なものが多いのに対して、福井総裁が多少楽観的な景気の見方を出して、ある意味でインフレタカ派的な発言をしているのは、それをけん制しているという意味で、評価して良いのではないかと思う。
そういった意味では、マーケットが昨年発したメッセージ──債券市場から発しているメッセージがマーケット自体の多少のオーバーシュートであったりするわけであるが──に対する経験は、実は今年のそうした発言等をみていると、かなり生きてきている可能性はあるのではないかという気がしている。
もう少し遡ると、これはいろいろな問題があると思うが、一番苦い経験でかつ各国の中央銀行に対する非常に参考になる例としては、資産バブルが崩壊した後の金融政策運営というのは非常にしんどいということがある。政策の手段がなくなる中で、相当長い間超金融緩和を続けなければならなかった。これは1990年前半の金融緩和の遅れということが一方であると思うし、加えて1997年、1998年と世界的なヘッジファンドブーム、あるいはいろいろなレバレッジがかかったポジションが溜まっていて、それが大きくマーケットを動かしてしまった。中央銀行が流動性を供給することによって、マーケットがレバレッジをかけたポジションを作っていく、簡単に言うと、尾っぽが胴体を振り回すような状況が、今日のようなマーケットでは起きかねないわけである。それを今一つ読みきれなかった。
それからもう一つは——これは日銀がということではないが——、米国で起きたITバブルのインパクトが景況感という意味でかなり悪影響を与えたことを若干見逃してしまった。あるいは、構造改革が完全に終わってない中で、ゼロ金利政策を解除してしまったという部分が多少あるのではないかと思う。
ただこれは政策の間違いかどうかということよりも、日本銀行も、あるいは他の中央銀行もそうであると思うが、マーケットと一緒にいろいろなこと、過去に経験していないことを、この10年、15年間で経験したということであり、それなりの学習効果というのは政策の上で反映されてくる。例えば、日本の低金利政策の弊害というのはFRBのデフレ対応型の金融政策から今年の一気の短期金利引き上げの中にも出てきているように、海外の中央銀行において資産デフレの対応のスピードを速くすべきであるとか、過度な流動性供給に対しては速く処理して戻すことをしないと資産価格が非常にコントロール不可能なところまで割高になる可能性がある、というふうに、日銀の過去の苦い経験が、他の中央銀行の参考になっている部分はあるのではないかと思う。
以上