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総裁記者会見要旨(9月23日)
G7終了後の谷垣大臣・福井総裁内外記者会見における総裁発言要旨
2005年9月24日
日本銀行
―於・ワシントンDC
2005年9月23日(金)
午後7時40分から約30分(現地時間)
冒頭発言
現状の日本経済を含む世界経済全体の状況は比較的良好であり、先行きも良好な見通しにあるということなので、日本の金融政策だけでなく主要国の金融政策については、差し迫った問題として議論が集中するという場面はなかった。経済が今申し上げた状況であるので、先行きのリスク要因にどのように対処するかということに議論の焦点が移った。
当面の最大のリスク要因として、石油価格の高騰が議論されたが、本日の議論を通じて、石油価格の高騰と金融政策の関連でのインプリケーションについて、私なりに感じたことを2つ申し上げる。
まず一つ目は、石油価格の問題が大きなリスク要因として全ての人々に認識されているという状況のもとで、今後の世界経済のより良き姿の実現との関連で金融政策を考えると、全ての人々、なかんずく石油生産にかかわる人々——採掘だけでなく精製の段階を含む全ての人々——に対して、世界経済の安定および持続的な成長に関する長期的な見通しに、より確信をもって頂けるようにする。そのために金融政策の面からも、総体としての価格安定を基軸とした持続可能な経済拡大の実現に向けた長期的な努力が必要であることが強く認識された。
もう一つは、通常、金融政策の観点からは、金融市場、資本市場の機能が万全であって、市場が示す様々なサインが金融政策にとって意味のあるものであり続けること、つまり金融政策と金融市場が出してくるサインが常に呼吸が合っているということが重要である。今後は、金融・資本市場だけでなく、石油を含む商品市場が出すサインについても、金融政策上大きな意味を持つ。なぜなら、商品価格の動きが石油製品の生産者の行動に影響を与える一方、消費者に対しては資源の有効活用−省エネ−を働きかける。そういうメカニズムが働き、資源の最適配分が行われる前提のもとで、全てのサインを受け取って金融政策が適切に行われる。このようなダイナミックな動きが要請されていくことが明確になったと思う。
以下質疑
【問】
先ほど原油価格について述べられたが、他のリスク要因のひとつであるグローバル・インバランスの問題が、日本の民需主導の景気回復に与える影響について伺いたい。来年度以降米国と中国の成長が鈍化するという見通しがある中で、今後日本が経済成長のエンジンとしての役割を果たせるのか伺いたい。
【答】
世界経済のどこかにリスク要因が潜んでいる場合に、従来は、どの国に問題があるのか、どの国の負担で問題を解決しなければならないのか、といった意識で眺めてきたと思う。しかしながら、グローバル化がここまで進展した現状においては、世界経済に潜むリスク要因は、グローバル経済に参加している全ての国の行動の結果として生じているという分析に行き着く。このため、全ての国が様々なかたちで問題をシェアしながら解決していくという意識に、G7の舞台においても変わってきていると思う。G7のコミュニケでも、グローバル・インバランスの問題については、米国は財政赤字の削減——より広くとらえれば貯蓄率の上昇——、欧州と日本はさらなる構造改革——別の言い方をすれば内需がより強く伸びる経済構造への転換——といった組み合わせで、物事を解決しなければならないという意識が出てきている。
この点を日本経済の運営に翻訳して申し上げれば、その時点で最も恵まれている条件だけを利用して、景気の回復あるいは経済の発展を図るのではなく、グローバル経済の中でより良き調和が図られるかたちで日本経済の前向きの運営をしていかなければならない。
民間部門における過去10年以上の苦しい過程を経ての構造改革の成果が徐々に出始めており、最近の日本の景気回復は、単に輸出に引っ張られるだけではなく、企業の設備投資や個人消費の底堅さといった内需の強さによって支えられるようになっている。つまり、日本経済は、内需と外需の比較的バランスのとれた牽引力を頼りにしながら回復を続けることができる状況になってきた。今回の所謂踊り場的な局面から日本経済が脱却する過程においても、輸出の回復よりは内需の回復の力によってそれをなし遂げたと思う。
先行きについては、公的部門の構造改革に課題が多く残っている。本日、谷垣大臣は日本の財政再建について詳しくお話をされた。公的部門の構造改革がさらに進めば、日本経済は、資源をより有効に使えるようになり、内需を伸ばしやすくなる経済になって、世界経済とより調和のとれたかたちで力を発揮していける。世界経済を一歩リードしていく力をそのようなかたちで出し得る条件を我々は十分持っていると思う。
以上