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総裁記者会見要旨(4月21日)
G7終了後の谷垣大臣・福井総裁内外記者会見における総裁発言要旨
2006年4月22日
日本銀行
—— 於・ワシントンDC
2006年 4月21日(金)
午後8時から約30分(現地時間)
【冒頭発言】
谷垣大臣からお話があったとおり、今回のG7では、原油高や国際収支の不均衡等のリスク要因はあるが、世界経済は引き続き堅調な拡大を続けているとの認識が共有された。
私からは、日本経済の状況や日本銀行の金融政策運営について、次のような説明を行った。
第一に、わが国の景気は、着実に回復を続けており、先行きも、内需と外需、企業部門と家計部門のバランスがとれた形で、息の長い景気回復が続くとみている。第二に、物価面では、消費者物価指数の前年比は、昨年11月以降プラスで推移しており、先行きも、需給環境の緩やかな改善が続く中、プラス基調を続けていくと予想される。第三に、こうした状況を踏まえ、日本銀行は去る3月、量的緩和政策を解除し、短期金利を操作目標とする政策に移行した。それにあわせて、金融政策の透明性を引き続きしっかり確保する観点から、新たな金融政策運営の枠組みを導入した。第四に、その新たな枠組みは、(1)「中長期的な物価安定の理解」を公表したこと、(2)2つの「柱」による経済・物価情勢の点検を行う仕組みをつくったこと、(3)当面の金融政策運営の考え方を公表することにしたこと、の3つの要素から構成されており、現時点でこうした枠組みは、わが国経済の実情を踏まえた最も適切なものであると考えている。そして第五に、先行きの金融政策運営としては、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持できると考えている。私からは、以上のようなことを説明した。
以下質疑
【問】
12月のG7声明では、インフレ圧力がリスクとして書かれていたが、今回の声明では、インフレが抑制されている、というように若干明るいトーンに変り、インフレは懸念材料ではなくなったと変化したように受け取れる。インフレに対する認識が変わったのかどうかについて伺いたい。
【答】
インフレのリスクに対する認識が12月の時点に比べて大きく変わっている、ということではないと思う。ただ、現実に世界経済はそうしたリスクを孕みながらも、今日までの適切な政策運営の効果もあってバランスのとれた着実な回復をたどっている、ということも事実である。そうした事実を踏まえながら、インフレ圧力についてのリスクは、より根底的な理由である世界的な不均衡の問題や、持続的な景気回復の妨げとなったりインフレを強くもたらすリスクのある原油高の問題等に、包摂して書かれていると理解している。
【問】
当初、長期金利の上昇傾向が今回のG7の主要議題になる、との見方があったが、声明文にはこのことについて直接の言及が見当たらない。この問題に関して、どのような議論が行われたのか、あるいは行われなかったのか、伺いたい。
【答】
長期金利に特に強い焦点を当てて議論する、ということはなかった。ただ、現実に世界的に長期金利が上昇してきており、その動きの中でボラティリティが高まっていると認識されているのも事実である。今回、長期金利に強い焦点を当てて議論が行われなかったのは、(1)これが世界的な景況感を背景とする動きであり、(2)世界的にみて株価が概して堅調である、また、(3)米国・日本・欧州の長期金利の動きがバラバラではなく連関性を持った現象である、といった共通の認識があったためではないか。他方、この先、金利に不確定な動きが出た場合には、金融市場はデリバティブの発達等により大きな変化を遂げていることもあり、気が付かないところで大きなフィナンシャル・リスクが発生する可能性がある点には十分注意しなければならない、という議論も行われた。
【問】
世界的に金融引締め方向にあることが財政状況の悪い新興市場国に悪影響を及ぼすのではないか、というような点が議論になったのかどうか、伺いたい。
【答】
主要国の中央銀行の金融政策は揃って引締めの方向にあるが、これは2000年秋のハイテク・バブルの崩壊後の事態に対応した超金融緩和からの復帰過程、いわばreturn to normality(正常な状態への復帰)のプロセスと性格づけられている。従って、これは経済に対し政策的に強いショックを与えるものではなく、物価安定の下で持続的成長を確保していくという性格を持った金融政策であり、基本的には安定指向である、ということが理解されていると思う。実際に主要国の中央銀行は、自国経済への影響や相互の経済への影響を点検しながら、慎重に金融政策運営を行っている。もっとも、今の金融政策というものは、グローバル化した大きな金融市場・資本市場を土台に行われており、主要国の金融政策の影響は世界中に及んで行く。こうした状況下、経済のショックに対する脆弱性の度合いは国毎に違っており、資本移動がショックを運ぶリスクが従来に比べて高まっているのも事実である。従って、そうした世界の隅々に及ぼす影響についても目を配りながら、主要国の中央銀行は金融政策を行っているところであり、今日のG7でもこうした議論が行われた。
以上