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年頭所感

(「金融」98年新年号掲載分)

 平成10年の新春を迎えるに当たり、わが国の金融経済情勢ならびに今後の政策運営等について、日頃の所感の一端を申し述べ、年頭のご挨拶に代えさせていただきます。

はじめに

 わが国は、ここ数年来、バブル崩壊の後遺症克服に努める一方で、従来の経済社会システムを新しい時代にふさわしい仕組みに作り変えていくという、きわめて難しい課題に取り組んでおります。

 昨年1年間を振り返ってみても、規制の緩和・撤廃など経済構造改革の取り組みが続けられる中で、財政構造改革や行政改革などの面でも、変革に向けての大きな一歩が踏み出されました。こうした変化を背景に、新たな時代を支える理念、例えば、グローバル・スタンダード、市場原理の貫徹、さらには自己責任原則の徹底の考え方などが、人々の間にかなり浸透するところとなったように思います。

 しかし、これらの取り組みが決して容易なものでないことは申すまでもありません。現に昨年は、その過程で避けて通ることのできない困難な課題に次々と直面することとなりました。

 まず、バブルの後遺症の克服との関係においては、金融機関の不良債権処理が全体としては着実に進む中にあって、誠に残念なことではありますが、銀行・証券会社・生命保険会社の破綻が相次ぎました。私どもでは、必要に応じて特融を実施し、また市場に潤沢な流動性を供給するなど、金融システムの安定確保に万全を期しているところであります。

 また、産業構造の変化が進むプロセスでは、いくつかの経済部門が構造的な調整圧力に晒されることは避けられません。こうした重石を抱える中で、景気は、昨年4月の消費税率の引き上げのあと減速局面に入りました。夏場以降は、経済・金融を巡る不透明感などを受けて家計支出が低迷を続け、年末にかけて景気の停滞色が強まりました。

 さらに、タイに始まった通貨・金融市場の不安定化は、国際化が進展する中で他のアジア諸国に伝播しました。私どもとしては、各国の通貨・金融情勢が一刻も早く落ち着きを取り戻すよう、国際機関を中心とする枠組みの下で、必要に応じて支援を実施しているところであります。

 こうした状況下、昨年末には、政府より、特別減税や来年度の法人税率の引き下げなどが表明されたほか、金融システム安定化のための方策が打ち出されました。また、日本銀行としましても、引き続き、金融面からわが国経済を支えていく所存であります。

 しかし、昨年の終わりにかけて、難しい問題が次々と表面化したあとだけに、新年を迎える人々の気持ちの中には、不安めいた部分が少なくないかもしれません。

 そうした中にあって、忘れてはならないのは、現在、好景気と低インフレを謳歌している米国経済でさえ、80年代後半から90年代初めにかけては、生産性の低迷や双子の赤字など、厳しい試練に晒されていたことです。しかし、その間に米国は、思い切った規制緩和や税制改革、さらには金融システム問題の処理を通じて、現在の繁栄の基礎を築いてきました。また、その背後で今や世界をリードするまでに成長した情報産業の芽が育まれていたことも見逃すことはできません。われわれも、目先の厳しさばかりに目を奪われることなく、本年こそ新たな時代に向けて確固たる足固めをすることが、是非とも必要だと思います。

 こうした中で、私ども日本銀行の関係では、昨年6月に新しい日本銀行法が、多くの方々のご理解・ご努力のお陰をもって可決・成立し、この4月より施行されることとなりました。私どもとしては、4月に向けて、そして新しい日本銀行としてスタートする4月以降も、法改正の趣旨を踏まえつつ、政策運営の透明性向上や業務運営の一層の効率化など不断の努力を重ね、幅広く自己改革を進めていく所存であります。

 以下では、このような基本認識に立って、経済・金融面のいくつかの課題について、申し述べさせていただきます。

金融システムの現状等

 金融システム面では、引き続き不良債権問題の早期克服が、最大かつ最も緊急を要する課題であります。特に、いわゆる日本版ビッグバン構想の本格的実施を目前に控え、一刻も早く、その安定を回復するとともに、効率的で活力あるシステムへと再構築していくことが、わが国経済の安定にとっても重要と考えられます。

 金融システムの安定を確保するためには、個々の金融機関の自助努力が、まず何よりも重要であることはいうまでもありません。この点、金融機関による不良債権の処理状況をみると、金融機関は引き続き積極的な処理姿勢を維持しており、全国銀行の9年度上期の償却・引当額は、上期としては過去最高の水準となりました。また、一部には、思い切った不良債権の前倒し処理を行うことによって、会計上の処理を完了する先も現れはじめています。

 不良債権問題に対応していく上での制度的な枠組みの整備も進展をみています。昨年12月には、預金保険法の改正が行われ、2001年3月末までの時限的措置として、モラルハザード防止のための措置を前提としつつ、経営が悪化した金融機関同士の新設合併に対する資金援助が可能となりました。

 さらに、わが国金融システムを巡る厳しい状況を踏まえ、公的資金投入論を中心とした金融システム安定化のための方策が真剣に議論・検討されました。昨年末には、預金の全額保護や緊急時における金融機関の自己資本充実のための措置につき、公的資金を活用できる仕組みを盛り込んだ予算案が閣議決定され、本年の通常国会には、関連法案が提出される見込みです。こうした対応については、具体化に際して、モラルハザード防止のための厳格なルールを設定することが必要ですが、わが国金融システムに対する見方が厳しさを増している中にあって、きわめて重要な意義を有するものと考えられます。私どもとしても、わが国金融システムが、内外からの信認を回復し、わが国経済を支えていくための本来の機能を一刻も早く取り戻せるよう、国民的合意の下、できるだけ早期に、措置が具体化されることを強く期待しています。

 このように、金融機関の不良債権処理や金融システムの安定確保のための枠組み整備が進捗をみている一方、いわゆる日本版ビッグバンの実施を目前に控え、わが国の金融機関は、新しい金融環境に向けて積極的に自己改革を遂げていくことが求められています。それだけに、個々の金融機関にとっては、不良債権の処理やリストラへの対応を加速させるのみならず、自主的なディスクロージャーの拡充を進めることにより、不良債権問題への対応が着実に進捗していることを、市場に対して明確な形で示すことが重要となっています。また、新たな金融システムへの移行を果たしていく中で、いわゆるコーポレート・ガバナンス(企業統治)の仕組みをしっかりと定着させていくことが必要であります。コーポレート・ガバナンスは、自己責任、透明性、市場規律といった基本的ルールを定着させていくうえでの前提と位置付けられるものと考えられます。日本銀行としても、昨年の一連の金融不祥事における経験をも踏まえ、今後、金融機関に対し、改めて内部管理体制の整備を含むリスク管理体制の強化を求めていく考えです。

 金融システムの現状などについては、以上のとおりですが、この間、日本銀行では、金融機関が破綻に陥った際には、仮にも金融システム全体の安定が損なわれることのないよう、中央銀行の立場から最大限の努力を行ってきました。具体的には、金融機関の破綻事例に当たっては、4原則(1)システミック・リスク顕現化のおそれ、(2)日本銀行による資金供給の不可欠性、(3)モラル・ハザードの防止、(4)日本銀行の財務の健全性への配慮)に照らして必要な場合には、日本銀行法第25条に基づく貸出——いわゆる特融——を実施してきたところです。また、山一證券が自主廃業及び解散の決定を公表した後、金融市場における流動性が低下したことから、日本銀行は、国債や手形の買い入れ、あるいは担保を徴求するかたちでの貸出——日本銀行法第20条に基づく貸出——なども併せて活用しながら、市場に対して潤沢に流動性供給を行うなど、金融市場の機能を維持するため、必要な措置を躊躇なく講じてきたところです。

 直面する不良債権問題への対応のみならず、同時に新しい金融システムの構築に向けた取り組みも重要な課題です。この点についても、既にいくつかの成果がみられているところです。例えば、早期是正措置の導入に関連して、金融機関は、大蔵省や公認会計士協会のガイドラインに沿って、自己査定や償却・引当の自行基準の策定を進めています。自己査定は、基本的には、金融機関が適正な償却・引当を行っていくための準備作業として位置付けられるものですが、日本銀行としては、同時に、信用格付制度の高度化、問題債権の早期発見、さらには信用リスク計量化の基礎固めなど、信用リスク管理能力の向上に活用していくとの視点も重要と考えています。

 また、決済システム面においても、資金、証券決済の両面で、リスク削減に向けた努力が続けられています。東京証券取引所における株式売買代金の即日決済化や国債のT+3ローリング決済化、一般債決済のオンライン化などが昨年中に実現したほか、本年末には、外為円決済システムのリスク削減策導入が予定されています。この間、日本銀行では、西暦2000年末までに日本銀行当座預金取引及び国債取引の即時グロス決済化(RTGS化)を実現することを目標に、準備を進めているところです。

国内経済の動向

 次に、国内の経済情勢についてでありますが、景気は、昨年4月の消費税率引き上げ以降、減速局面に入り、年の終わりに向けては、企業マインドが悪化するなど、停滞色が強まったように窺われます。

 最終需要面をみると、純輸出が増加基調を続けており、設備投資も、製造業を中心として、緩やかに増加しております。一方、公共投資が減少傾向にあり、住宅投資は落ち込んでおります。また、個人消費については、消費者心理が慎重化していることもあって、低迷の度合いを強めております。

 こうした最終需要の動向を背景として、在庫調整の動きが、耐久消費財や建設財を起点に徐々に拡がりを見せ始めているため、鉱工業生産は弱含みの展開となっています。さらに、雇用や所得面も、一頃に比べ改善テンポが鈍化しつつあります。

 一方、物価面をみると、卸売物価はこのところやや軟化していますが、消費者物価などを含めた全体としては、安定した動きとなっています。

先行きの景気動向と金融政策運営

 経済の現状に関する私どもの認識は、以上申し述べたとおりであり、生産、所得、支出を巡る経済の循環については、このところその働き具合が一段と弱まってきていることは否めません。

 そうした中で、昨年末に政府から表明された、特別減税の実施や来年度の法人税減税の実施、さらには金融システム安定化のための方策などの、いくつかの政策措置には、きわめて重要な意義があるものと思われます。本年の経済情勢を考える上では、こうした措置によって、企業や家計のマインド面の動き、とりわけ消費者心理の慎重化を背景に回復が遅れている家計支出や、在庫調整の進捗度合いがどのような推移を辿るのか、といったことについて、十分注意深く点検していくことが必要であります。

 この関連ではさらに、アジア経済の変調がわが国経済に及ぼす影響や、金融機関の貸出動向を見極めることも大切です。

 まず、前者のアジア経済についてですが、昨年夏にタイに端を発した通貨・金融市場の不安定化は、その後インドネシアなどの周辺国や、最近では韓国にも伝播しております。この背景には、各国の経常収支悪化や、金融部門の脆弱さなどが指摘されており、当該国では、総需要抑制や金融部門のリストラなどの経済調整策を実施しています。私どもとしては、東アジア地域が、勤勉な労働力、高い貯蓄率、市場や産業インフラなど、引き続き高い潜在成長力のための条件を備えていることに、変化はないものと考えています。従って、各国の調整策が今後着実に成果をあげ、通貨・金融情勢が一刻も早く落ち着きを取り戻すことを強く期待するとともに、国際機関を中心とする枠組みの下で、必要に応じ、各国の努力を支援しているところであります。

 そこでわが国経済への影響をみると、各国の経済調整策を踏まえると、当面は東アジア地域の内需が減速し、その影響がわが国に及ぶことは避け難いとみられます。実際、わが国のアジア向け輸出には、タイ向け、韓国向けを中心に、鈍化傾向がみられています。わが国の輸出全体へのインパクトということでみれば、これまでのところ、米国や欧州向けなどが堅調を維持しているため、限定的とみられますが、今後東アジア地域の成長鈍化が、深くかつ長いものとなれば、わが国への影響も無視できないものとなりましょう。そうした観点からも、今後の東アジア地域経済の動向については、十分注意してみていく考えであります。

 次に、金融機関の貸出動向についてですが、金融機関サイドでは、経営の健全性や効率性を高める観点から、貸出に関するリスク管理強化や収益性重視を打ち出す先が増えております。実際、12月の短観では、金融機関の貸出態度判断DIが、中小企業を中心に、「緩い」超から「厳しい」超の方向へ転じるなど、企業金融に関する判断が全般に厳しい方向に振れており、これは過去の金融緩和局面にはみられなかったことです。

 問題は、こうした金融機関の融資態度の慎重化が行き過ぎて、景気全体の動きを阻害するまでに至っているかどうかということです。これまでのところ、企業の資金需要自体が伸び悩んでいることもあって、企業金融が急速に逼迫するというような事態には立ち至っていないように窺われます。しかし、金融機関の貸出態度が一段と慎重化し、それが企業金融の実態面にさらに強く現れてくる可能性も十分にあり得ると思われます。そうした状況のもと、政府は昨年末、金融機関の融資対応力を強化し、金融システムの安定化を図る観点から、早期是正措置の弾力的運用や自己資本比率向上策を策定いたしました。私どもとしても、この問題については、今後の動向を引き続き注意深くみて参る所存であります。

 また、金融機関行動が、景気の動きを「阻害」はしていないまでも、かつての金融緩和期のように積極的に「後押し」していないことも事実です。やはり金融機関には、新たなビジネスチャンスの発掘を手伝うとか、資金面のリスクを引き受けるなど、企業の前向きの活動を積極的に支援する機能が期待されるところです。この面からも、金融機関や金融・資本市場の活力を強化し、強固で効率的な金融システムを再構築することが、重要な課題であると認識しております。

日本銀行法の改正

 最後に、日本銀行法の改正について申し述べます。

 昨年6月、新日銀法が国会において可決・成立し、本年4月から施行されることとなりました。

 現行日銀法は、戦時中に定められたものです。これを、市場化・国際化という大きな金融経済環境の変化に即し、また、将来の変化に耐えうるように改正することは、日本銀行の永年にわたる願いでありました。また、このことは、グローバルスタンダードを踏まえて日本の金融システム全体を再構築していく上で、必要な課題であったといえます。

 今回の日銀法改正の狙いは、「独立性」と「透明性」という2つの理念を軸として、21世紀の金融システムの中核に相応しい中央銀行制度を整えることにありました。

 まず、中央銀行の「独立性」についてですが、一昨年の中央銀行研究会では、「インフレ的な経済運営を求める外部からの圧力を排し、物価の安定を達成するためには、中央銀行に独立性を付与する必要がある。」とされていました。新日銀法では、こうした中央銀行研究会報告やその後の金融制度調査会答申をも踏まえて、金融政策運営は、独立した中央銀行という組織の中立的・専門的な判断に完全に委ねることが望ましい、という考え方に基づいて具体的な制度設計がなされたわけです。

 この点を具体的にみると、(1)日本銀行の金融政策における自主性(独立性)が尊重されねばならないこと、が明示的に規定され、また、(2)意見が異なることを理由とする政府による役員解任権や政府の広範な業務命令権が廃止されました。また、(3)中央銀行の独立性を尊重しつつ、政府との十分な意思疎通を図る仕組みとして、政府が必要に応じ金融政策を審議する政策委員会の会合に出席し、議案の提出や議決延期を求めることができる、という仕組みが採用されました。このように新日銀法では、金融政策に関する日本銀行の独立性がきわめて明確なものとなっており、グローバルスタンダードに即した仕組みが整えられたといえましょう。

 また、「独立性」が法律上明確にされたことを受け、その制度的な仕組みとして、最高意思決定機関である政策委員会の機能強化が図られました。

 日本銀行が、国民やマーケットから信認を得て政策を運営していくためには、「独立性」を高めると同時に、政策運営の「透明性」を高め、国民や国会に対して説明責任を十分果たしていくことが求められます。この点、新法では、金融政策を審議する政策委員会の議事要旨等の公表について規定の整備が図られたほか、現在、年1回とされている政策委員会から国会への報告書提出を年2回に充実すべきこととされ、また、国会から求められた場合の出席義務についても明文の規定が置かれています。

 日本銀行の目的・理念について、新法では、「我が国の中央銀行として、銀行券を発行し、金融政策を遂行することによって、物価の安定を図り、これを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と「決済システムの円滑かつ安定的な運行の確保を通じて、信用秩序の維持に資すること」の2つであるとされました。このように中央銀行の目的が明確化されたことは、大変意義深いことです。

 新法では、日本銀行の業務についても、必要な規定の整備が図られています。中央銀行は、銀行券の発行や公開市場操作など、中央銀行業務を通じて、政策目的を追求するという組織であるため、金融経済環境の変化に対して柔軟に対応していけるような枠組みが制度的にも整えられることが必要です。この点、新法では、「日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。」とされ、こうした基本的考え方の下で、信用秩序維持に資する業務(「最後の貸手」機能等)や、考査、国際金融業務など、日本銀行の業務が明確にされました。また、政府による監督についても、現行法に規定されている広範な監督権限が見直され、「合法性のチェック」に限定されたほか、認可制が残った経費の予算も、認可対象の限定・認可プロセスの透明性確保などの工夫が図られています。

 以上のように、「独立性」と「透明性」という考え方を軸とした、新しい中央銀行制度の枠組みが整えられたことは、日本銀行が今後21世紀に向けて、自己改革を進めながら与えられた使命を達成していく上で、非常に大きな力になるものと考えています。

 日本銀行が独立した中央銀行として、国民やグローバルマーケットから信認を得ていくためには、こうした制度の枠組みが整備されただけでは十分ではありません。日本銀行自身が、国民に対し重大な責任を負うことを自覚し、適切な政策・業務運営に向けて不断の努力を重ねていくことが何よりも重要であると受け止めています。そうした観点から、日本銀行では、今回の法改正の趣旨を踏まえて、政策運営面での透明性の向上、業務運営面での一層の効率化等、自ら積極的に改革を進めるため鋭意検討を進めています。

 その一環として、昨年12月26日には、(1)政策委員会のうち金融政策を審議・決定する会合(「金融政策決定会合」)を、原則、毎月2回定例的に開催し、その先行き半年分の日程を事前に公表する、(2)金融政策決定会合の議事要旨を、2回後の決定会合の3営業日後(通常約1ヶ月後)に公表することなどを、新日銀法の施行をまたず、本年1月より実施する旨決定し、これを発表しました。

 金融政策決定会合を定例化し、その開催日を事前に周知することは、政策決定のタイミングを巡る市場の無用の憶測・混乱を防止する効果が期待できます。また、議事要旨の公表は、政策決定過程の透明性を高めることとなります。いずれも、「透明性」の向上を実現する上で大変重要な仕組みであり、金融政策運営に対する国民やマーケットからの信認の確保に資するものと考えています。

 また、新日銀法の施行に合わせて、日本銀行では、機構改革を実施することとしております。

 機構改革のポイントは、本年4月の新日銀法施行を機に、政策委員会を軸とした政策運営・業務執行体制をより明確に確立するとともに、日本銀行に負託された中央銀行としての使命の十全かつ効率的な遂行を目指すというものです。

 具体的には、(1)政策委員会事務局の機能強化、(2)執行ラインの短縮化および役員分掌の見直し、等を行い、現行の13局2室1研究所の局室構成を、10局5室1研究所とする方針です。

むすびに代えて

 以上縷々申し上げてまいりましたが、21世紀を前に、グローバルな環境変化の中で、これまでの制度や慣行を見直していくことは、日本経済にとって重要な課題です。皆様方におかれましては、本年も創意と工夫を経営に最大限に発揮され、民間部門の活力により、新しい日本経済への道筋をさらに切り拓いていっていただきたいと思います。私どもとしましても、日本銀行に負託された責務を果たすべく、インフレなき持続的な経済成長の実現に向けて全力を傾注するとともに、金融システムの安定維持に万全を期してまいりたいと存じます。

以上