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第75回信託大会における総裁挨拶
2000年 4月13日
日本銀行
本日は、第75回信託大会にお招き頂きまして、誠にありがとうございます。信託銀行の皆様におかれましては、日頃から、日本銀行の政策運営や業務運営に際し、多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。
本席で皆様とお会いするのは、ほぼ2年振りのことになります。この間、日本経済や金融システムは、かつてない困難な課題に直面して参りました。しかし、幸いにして、皆様方の真剣な取り組みや政策面からの支援を契機に、ようやく新しい時代の展望が拓けつつあるように思います。
この間の経済情勢から振り返りますと、昨年初めに、日本経済が大変深刻な状況に陥る中、日本銀行は、ゼロ金利政策というきわめて思い切った金融緩和策を講じました。この間、財政面からも、大規模な対策が打ち出されました。
こうした思い切った財政・金融政策のもとで、景気は徐々に好転し、最近では持ち直しの動きが明確になっています。今後の景気回復の牽引役となることが期待される民間需要の面でも、設備投資が緩やかながら増加に転じるなど、一部に回復の動きがみられ始めています。このため、物価面でも一頃のデフレ懸念は後退しており、総じて横ばい圏内での動きが続いています。
この間、産業構造の転換や新しい国際環境への対応といった中長期的な課題についても、情報通信分野での技術革新や流通革命の進展をてこに、新しい取り組みが各方面で進められていることも、心強い材料です。
日本銀行としては、今後とも、物価の安定を通じて、日本経済の健全な発展に資するよう、経済金融情勢の的確な把握に努め、金融政策運営に誤りなきを期して参りたいと考えています。
次に、金融システム面の課題について申し上げます。昨年来、多くの金融機関において、自助努力あるいは公的資本により資本基盤の増強が図られたことや、大手銀行を中心として、金融再編に向けた動きが活発化したことなどにより、わが国金融システムに対する内外からの信認は大きく回復しました。
しかしながら、今後、わが国金融システムの一層の効率化・活性化を図っていくためには、なお、取り組むべき幾つかの課題が残されています。
まず第1は、不良債権のバランス・シートからの切り離しを含め、不良債権問題を完全に克服し、市場の信認を維持するに足る確固たる経営基盤を構築していくことです。
第2は、経済のグローバル化や情報化の進展など、金融を巡る大きな環境変化を踏まえつつ、金融機関それぞれが、21世紀を見据えた経営戦略を早急に固め、経営の再構築を加速していくことが極めて重要と考えます。
近年における情報処理技術の著しい進歩や、それを背景とした金融イノベーションの進展により、顧客ニーズに合った様々な金融サービスの提供が可能となってきています。信託業界におかれては、経営の再構築の中で、信託機能を有効に活用することにより、新たな資産運用・管理ニーズや、年金分野をはじめとする高齢化社会への対応などの面で、一層積極的に貢献していくことを期待しています。
私どもとしても、金融市場の整備や日銀当座預金取引におけるRTGS化など決済システムの安全性の向上に取り組むことにより、引続きわが国金融システムの活性化に努めていく所存です。
最後となりましたが、信託業界の今後の一層のご発展を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。
以上