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全国労働金庫協会・連合会通常総会総裁挨拶

(三谷理事代読)

2002年 6月27日
日本銀行

[目次]

はじめに

 本日は、このような席にお招きいただき、誠にありがとうございます。労働金庫の皆様におかれては、勤労者の福利共済活動を支える金融機関として、国民生活の充実に貢献してこられました。皆様方のご努力に対しまして、深く敬意を表したいと思います。

 また、皆様方には、日本銀行の政策や業務の運営に、日頃から多大なご協力を頂いております。本席をお借りして、改めて厚くお礼申し上げます。

 本日は、(1)最近の経済情勢と金融政策運営、(2)続いて金融システム面の課題についてお話しして、ご挨拶に代えたいと思います。

経済情勢と金融政策運営

 わが国の景気は、昨年中、輸出・生産の大幅な減少が続くなど、広範な悪化傾向を辿ってきました。しかしながら、ここにきてようやく「下げ止まり」に向けた動きがみられるようになってきています。設備投資など、国内最終需要は弱めの動きが続いていますが、米国をはじめとする海外経済の回復を背景に、輸出がはっきりと増加し、つれて生産も持ち直しています。

 この間、日本銀行は、内外の中央銀行の歴史に例のない、きわめて思いきった金融緩和を行ってきました。ようやく下げ止まりの動きが見え始めた景気の足取りを、さらにしっかりしたものにしていくためにも、金融政策運営面では、内外の金融資本市場の動向も注視しつつ、現在の思いきった金融緩和を粘り強く継続していくことが、何よりも重要と考えています。

 また、景気に明るさが見え始めた今こそ、経済・産業面の構造改革や金融システムの強化への取組みを強めていくことが必要ですし、またその好機だと思います。金融機関や企業の経営者の方々をはじめ、各方面の積極的な取り組みを期待しています。

金融システム面の課題

 次に、金融システムを巡る問題について一言申し上げます。

 労働金庫業界では、主に勤労者を対象とした住宅ローン等の貸出業務を展開しておられ、かねてより信用リスク管理に努めてこられた結果、現状、不良債権問題の経営への影響は比較的軽微と伺っており、大変心強く感じております。

 ただ、残念ながら、わが国の金融システム全体としてみると、不良債権問題の解決に向けて、なお多大な努力を要する状況にあります。景気の現状と今後の構造改革を展望すると新規不良債権の発生と既存の不良債権の劣化が起る可能性があり、引続き早目早目の対応に努めることが必要であると思います。

 一方、収益力の強化も不良債権処理と同時に今から取組むべき問題です。金融機関がそれぞれの特性を踏まえ、経営資源の配分見直しなどの面で一層の努力を傾けることが必要です。この点、労働金庫業界では、地域統合を意欲的に進められるなど、経営環境の変化に柔軟かつ前向きに対応しておられると伺っております。今後とも、労働金庫業界が収益力の更なる強化に努められ、現下の厳しい金融経済情勢を乗り越えて、益々の発展を重ねられることを祈念し、ご挨拶に代えさせて頂きます。

 ご清聴有難うございました。

以上