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全国信用組合大会総裁挨拶要旨

(三谷理事代読)

2002年10月18日
日本銀行

はじめに

 本日は、全国信用組合大会が、盛大に開催されましたことを、心よりお慶び申し上げます。

 信用組合の皆様におかれましては、地域や顧客に密着した金融機関として、地域・職域・業域の発展に貢献してこられました。 また、日頃から、私ども日本銀行の政策や業務の運営にご理解とご協力を頂いており、この点、本席をお借りして厚く御礼申し上げる次第です。

 私からは、最初に、金融経済情勢や日本銀行の政策運営について簡単にご説明したあと、金融システム面の課題や、この分野における日本銀行としての新たな取り組みなどについて、お話したいと考えています。

金融経済情勢と政策運営

 まず、金融経済情勢について申し上げます。

 わが国経済は、本年入り後、海外経済の回復や情報関連財の在庫復元の動きなどを背景に、輸出や生産が増加に転じており、現状は、全体として「下げ止まっている」と言える状況になってきたと考えています。

 先日発表した9月短観でも、今年度の企業収益が回復基調にあることや、企業の業況感が緩やかながら改善していることが確認されました。

 一方、設備投資や個人消費など、国内民間需要は、わが国経済が様々な構造調整圧力に直面するもとで、回復力を欠く展開が続いています。しかし、海外景気の緩やかな回復が持続していけば、わが国の景気も、次第に底固さを増していくと考えられます。

 先行きを展望しますと、海外経済の動向やわが国の輸出環境には、強い不透明感が存在しています。また、後ほど触れますように、不良債権処理の加速に向けた取り組みの強化など、わが国の金融システムを巡る情勢は、ここにきて大きく変化しつつあります。株価も、このところ、やや不安定な展開が続いています。

 これらの要因が、今後の経済情勢にどのような影響を及ぼしていくか、日本銀行としても、十分注視してまいりたいと思います。

 この間、金融市場では、日本銀行の潤沢な資金供給もあって、基本的には、緩和感の強い状況が維持されています。短期金利も、全体としてみれば、ほぼゼロ%近傍の水準で落ち着いています。

 このように、金融市場の安定を確保していくことは、日本経済を持続的な成長軌道に復帰させていくうえで、中央銀行の立場からなし得る重要な貢献だと考えています。

 日本銀行としては、今後とも、市場の状況を注視しつつ、潤沢な流動性供給を通じて金融市場の安定に万全を期していくとともに、景気回復に向けた動きを、金融面からしっかりとサポートしていきたいと思います。

金融システム面の課題

 次に、金融システムの動向についてお話しします。

 不良債権問題について、わが国金融機関は、過去約10年の間、90兆円にものぼる巨額の処理を実施してきており、この問題の克服に向けて相応の進捗をみています。

 しかし、なお不良債権の新規発生が高い水準で続くとみられるなか、金融機関の貸出利鞘の薄さや経営のバッファーとして機能してきた含み益が大幅に縮少している状況などを踏まえると、わが国の不良債権問題は、金融機関の経営体力や収益力との対比では、これまで以上に厳しい状況に直面していると考えられます。

 こうした認識に立って、日本銀行では、不良債権問題について改めて総括的な検討を行い、先般「不良債権問題の基本的な考え方」を公表しました。

 日本銀行としては、不良債権問題の発生原因がバブルの崩壊のみならず、我が国の構造調整問題の側面が加わりつつあるとの基本認識の下で、問題克服に向けて、まず、不良債権の経済価値を適切に把握し、それに基づいて早期処理を促進することが必要と考えています。

 また、これと同時に、金融機関が今後発生し得る信用コストに対処しながら、健全な企業活動を十分にサポートしていけるよう、金融機関・企業双方の収益力強化や企業再生に向けた取り組みを推進することが重要と考えています。

 併せて、こうした取り組みを進めるに当っても、危機を未然に防ぐ態勢を構築し、金融機関が不良債権問題の克服に着実に取り組めるような環境や仕組みを整備することが必要であると考えています。

 日本銀行では金融機関の保有株式の一部を時価で買い入れるという臨時異例の対応に踏み切りましたが、これも、こうした観点を踏まえての措置です。

 現在、政府におかれても、不良債権処理の加速のための施策が鋭意検討されていると承知しています。日本銀行としては、今般、私どもが公表した「基本的な考え方」が、関係者の検討に資することを期待しています。

 以上鏤々申し上げましたが、最後に皆様の今後の一層のご発展を祈念しまして、私の挨拶とさせて頂きます。

 ご清聴有り難うございました。

以上