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全国労働金庫協会・連合会通常総会総裁挨拶

(山本理事代読)

2003年 6月26日
日本銀行

 本日は、このような席にお招き頂き、誠にありがとうございます。労働金庫の皆様方におかれましては、勤労者の福利共済活動を支える金融機関として、国民生活の充実に貢献しておられます。皆様方のご努力に対しまして、深く敬意を表したいと思います。

 また、皆様方には、日本銀行の政策や業務の運営に、日頃から多大なご協力を頂いております。本席をお借りして、改めて厚くお礼申し上げます。

 本日は、(1)最初に、最近の経済情勢と金融政策運営について、(2)続いて金融システム面の課題についてお話ししたいと思います。

 わが国の景気は、このところ全体として横這い圏内の動きを続けています。先行きについては、足許少し弱含みとなっている輸出や生産の動きが、本年後半以降、着実に立ち上がってくれば、経済の前向きの循環が働き始めると考えています。

 もっとも、海外経済の動向をみますと、イラク情勢にかかる不確実性は解消しつつありますが、その後、欧米経済の動きは必ずしも芳しくありません。こうした中、米国では、昨日のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の政策金利引下げが行われました。また、比較的高めの成長を維持してきている東アジアでも、このところ、景気の回復テンポが幾分緩やかになっています。

 もうひとつのリスク要因として、株価、為替相場の動向を含めた金融資本市場の動きからも目が離せません。幸い、最近の金融市場は、安定を維持していますが、実体経済の動向や金融システムを巡る情勢等を勘案すると、今後とも、金融資本市場や企業金融面に関するリスク要因には、引き続き注意していく必要があると考えています。

 以上のような経済金融情勢のもとで、日本銀行は4月、5月と日銀当座預金残高目標の引き上げを実施しました。景気の先行きについての不確実性が高まるもとでも、こうした日本銀行による追加資金供給もあって、金融市場における流動性を巡る不安感は払拭されています。

 日本銀行としては、潤沢な資金供給が経済活動の拡大に効果的に結び付いていくためには、金融システムの早期健全化により金融仲介機能を強化していくことが不可欠であると同時に、金融政策面では、金融緩和の波及メカニズムの強化を図ることが重要な課題であると考えています。

 こうした観点から、日本銀行は中堅・中小企業関連の資産担保証券の買入れを開始することとしました。わが国の資産担保証券市場は、なお発展途上にありますが、今後、この市場が拡大すれば、新たな金融仲介ルートの定着・拡大に繋がり、企業金融の円滑化に資することになると思います。日本銀行としては、日本銀行による資産担保証券の買入れが、揺籃期にある市場の発展の契機となることを強く期待しています。

 次に金融システムを巡る問題について一言申し上げます。

 わが国の金融システムは、全体としてみると、健全化は未だ道半ばであり、引き続き厳しい状況が続いています。もっとも、各金融機関においては、不良債権の経済価値を適切に把握し、それに基づいた引当を進めるようになってきています。また、更に一歩進んで、企業の再生に向けた前向きの動きも、産業再生機構の業務開始をはじめとして着実に進展しつつあります。日本銀行としても、蓄積されたノウハウの提供を通じて、こうした前向きの動きを多少なりともサポートして参りたいと考えているところです。

 以上が金融システム全体の状況ですが、労働金庫業界では、かねてより信用リスク管理に努めつつ、勤労者を対象とした住宅ローン等貸出業務を中心に業務を展開してこられました。このため、現在不良債権問題への対応は大きな経営上の課題とはなっていないと伺っており、大変心強く感じているところです。ただ、金融機関経営を巡る環境は、厳しく、また大きく変貌しつつあるだけに、引き続きリスク管理能力の向上に一層意を用いて頂きたいと思います。

 また、労働金庫業界では、経営効率化や基盤の強化を図るため、地域毎の統合を積極的に進めておられます。今後、こうした経営統合が所期の成果をあげ、労働金庫業界が、顧客に対してこれまで以上に充実した金融サービスを提供しつつ、益々、発展されていくことを祈念し、ご挨拶に代えさせて頂きます。

 ご清聴有難うございました。

以上