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全国信用組合大会における総裁挨拶要旨
2003年10月17日
日本銀行
はじめに
本日は、全国信用組合大会が盛大に開催されましたことを、心よりお慶び申し上げます。
信用組合の皆様におかれましては、地域や顧客に密着した金融機関として、地域の発展に貢献してこられました。また、皆様には日頃から、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、あつく御礼を申し上げます。
経済金融情勢と金融政策運営
日本経済はこれまで、かつてない厳しい調整圧力に直面してまいりました。しかし最近では、企業や金融機関など民間の真剣な取り組みや、さまざまな政策対応、さらには海外経済の回復といった後押しもあり、ようやく緩やかな景気回復への基盤が整いつつあるように思います。
すなわち、米国やアジア経済が回復するもとで、わが国の輸出はこのところ幾分増加しつつあります。今月初に公表した短観でも、企業の収益が増加し、業況感も改善する中、本年度の設備投資も増加する計画となっていることなどが確認されました。
景気の先行きにつきましても、輸出や生産が増加することを通じて、次第に前向きの循環が働き始めると考えられます。もっとも、企業の過剰債務圧縮や人件費抑制など構造的な調整圧力も根強いことを踏まえますと、国内需要の自律的な回復力が高まるには、なお時間がかかるとみられます。したがって、景気の先行きにつきましては、引き続き注意深くみていく必要があると考えています。
日本銀行はかねてから、消費者物価の上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、現在のたいへん思い切った金融緩和政策、すなわち、量的緩和政策を続けると宣言しています。現在、経済情勢は回復に向かいつつありますが、こうした中にあって日本銀行は、只今申し上げた方針を堅持し、景気回復の芽を大事に育てていきたいと考えています。
また、このような考え方に立って、日本銀行は先般の金融政策決定会合において、新たにいくつかの措置を決定しました。
まず、金融調節の柔軟性や機動性を高める観点から、日本銀行当座預金残高目標の上限の引き上げや、国債買い現先オペの最長期間の延長といった措置を決定しました。また、現在の量的緩和政策を継続するコミットメントについても、これをより明確化することとしました。
日本銀行は今後とも、金融政策面から経済活動をしっかりとサポートし、現在みられる景気回復に向けた動きを、より確実なものとしていく考えです。
金融システム面の課題
次に、金融システム面の最近の動向についてお話しします。
わが国の金融システムは、全体としては依然厳しい状況にあると言わざるを得ませんが、健全化に向け、昨年秋からの取組みの成果が徐々に出始めているように思います。以下は、これまで金融機関をはじめとした関係者の間で、不良債権問題を克服し、金融システムを健全化していくポイントとして意識されてきたものですが、これらは、信用組合業界にも関係の深いものと言えます。
一つめは、不良債権の経済価値のより適切な把握と、それに基づく引当・償却の実施です。これは申すまでもなく、不良債権問題への対応の基本となるものです。皆さんに係わりの深い地域の中小企業についても、経営環境が厳しいなか、それぞれの実情に即した木目細かな対応が必要と考えられます。
二つめは、産業・金融一体となった対応です。この点に関し、各方面の取組みに具体的な進展が見られています。産業再生機構の活動が本格化したほか、信用組合業界におかれても、政府系金融機関との連携を強化するなど、企業再生や新規事業立ち上げ支援に着手されたと承っています。これらの取組みが出来るだけ早期に成果に結びつくことを期待しています。
最後は、金融機関の収益力強化です。このことは金融機関が不良債権問題を克服し、その期待される機能を十分に発揮していくために、欠くことのできない要件です。協同組織金融機関にとっても、収益性の確保はやはり重要と考えています。
只今申し上げたいずれについても、大事なことは、経営者の皆様方がそれぞれの特色や経営基盤を活かしつつ取組んでいくということです。この点は、顧客との密接な繋がりを重視する金融機関である信用組合業界におかれては、特に重要なのではないかと思います。
おわりに
以上、いろいろと申し上げてまいりましたが、日本経済が持続的な成長を実現していく上では、それぞれの地域における経済活動の新しい「芽」を見出し、これを大きく育てていく地域の金融機関の方々の活動が、きわめて重要と考えております。私としても、皆様方のご活躍に大きな期待を寄せているということを、申し上げておきたいと思います。
最後になりましたが、皆さま信用組合業界の今後の一層のご発展を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。
以上