ホーム > 日本銀行について > 講演・記者会見・談話 > 講演・記者会見(2010年以前の過去資料) > 講演・挨拶等 2005年 > 最近の金融経済情勢について──2005年6月27日、旭川市における金融経済懇談会での春英彦審議委員挨拶要旨

最近の金融経済情勢について

2005年6月27日、旭川市における金融経済懇談会での春英彦審議委員挨拶要旨

2005年6月27日
日本銀行

[目次]

  1. 1.はじめに
  2. 2.景気・物価の現状と見通し
    1. (1)4月展望レポートの見通し
    2. (2)海外経済
    3. (3)国内経済
    4. (4)物価動向
    5. (5)下振れリスクとしての原油高
    6. (6)景気の持続性
  3. 3.金融政策運営の現状と見通し
    1. (1)量的緩和政策の仕組みと効果
    2. (2)札割れとなお書きの修正
    3. (3)今後の金融政策運営など
  4. 4.旭川市、道北地区における地域振興

1.はじめに

 本日は、ご多忙の中、旭川市をはじめとして道北地区の行政および経済界を代表される皆様方のご出席を賜わり、懇談の機会を得ましたことを大変、光栄に存じます。

 日頃は、遠山支店長、安藤所長をはじめ日本銀行札幌支店、旭川事務所が、金融・経済の調査等々で大変お世話になっております。厚くお礼申し上げますとともに、今後ともよろしくご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。

 さて、本日は、まず私から最近の景気の現状や金融政策運営の状況などについてご報告し、その後、皆様方から当地の金融経済動向や日本銀行の金融政策に対するご意見等をお聞かせ頂ければと存じます。

2.景気・物価の現状と見通し

(1)4月展望レポートの見通し

 日本銀行は、4月末、「経済・物価情勢の展望(2005年4月)」(所謂「展望レポート」)を公表しました。その中で2005年度、2006年度の経済情勢の推移について、「IT関連分野の調整の影響が弱まるにつれて、年央以降、回復の動きが次第に明確になり、2005年度は、一般に+1%程度とされている潜在成長率を若干上回る成長が実現するとみられる」「2006年度は、現時点においてはかなり幅を持って見る必要があるが、緩やかながら持続性のある成長軌道を辿ると予想される」と想定しています。その基本的なメカニズムとしては、1)海外経済が拡大基調を続けることに加え、2)企業の様々な取組みにより企業収益が高水準を続けること、3)その企業収益の好調が様々な形で経済の各部門に及んでいくこと、さらに4)慎重な企業行動を背景に設備投資、在庫投資などの面で行き過ぎは回避されていくことを想定しています。

(2)海外経済

 まず、海外経済については、米国はソフトパッチと呼ばれる減速が心配された局面もあり、このところやや生産の増加テンポが減速していますが、堅調な住宅投資をはじめ、個人消費もまずまず底堅く、米国経済は実質GDP成長率で潜在成長率と見なされる+3%台半ばの成長を継続しているようです。民間エコノミストの中心的な見方でも、通年で+3%台半ばの成長を予想しています。

 また、中国は、引き続き高成長を継続しています。その中で、日本からの中国向け輸出はこのところ伸び悩んでいます。これは中国における携帯電話や自動車などで在庫調整が生じていることや、過熱抑制策の影響で資本財の輸入が減少していること、さらにはこれまでの設備投資により国内の生産能力が拡大していることが原因として挙げられています。中国向けの輸出が回復するには暫く時間が必要となる可能性があります。

 欧州地域ではやや停滞感が広がっているようです。

 これらを総じて見ると、日本から見た外需という面では、想定していた姿より幾分下振れて推移しているようです。

(3)国内経済

 一方、国内経済は、輸出は伸び悩んでいますが、IT関係の調整が進む下で、生産は緩やかながら増加しています。企業部門は今春の企業決算に明らかなように高収益を上げており、2005年度についても若干の増益が見込まれています。こうした好調な企業収益が、設備投資や個人消費にどのように繋がっていくかがポイントです。

 まず、設備投資については、6月13日に発表された1~3月実質GDP2次速報では前期比年率+9.9%と2桁近い成長となりました。製造業については、過剰設備の処理が進んだ結果、設備稼働率は4月に1997年5月以来約8年振りの高い水準まで上昇しています。機械受注や建築着工床面積といった設備投資先行指標もしっかりとした増勢が続いているほか、先行きの計画も、例えば日経新聞の「2005年度設備投資動向調査」では、全産業の当初計画が2004年度実績を大きく上回り、バブル期以降としては初めての2年連続2桁増加と報じられています。

 もう一つのポイントは、企業収益の個人消費への波及です。個人消費の背景となる雇用・所得環境にも変化が見られています。4月の有効求人倍率は1992年11月以来の高い水準まで上昇、失業率は1998年12月の水準まで低下しています。雇用者数も増加しており、中でもフルタイムの労働者が増加する一方で、これまで拡大していたパートタイム労働者の前年比伸び率が、4月には減少に転じています。企業はこれまで、人件費をできるだけ抑制するため、パートタイム労働者の雇用を優先してきましたが、この流れが変わりつつあるように思えます。業績連動により、賞与も増加しており、これらの結果、1人当たりの賃金は全体として下げ止りが明確になっています。また、最近はM&A対策を含めて配当を厚めにする企業も増えております。このように所得面にも企業の業績好調の影響が少しずつ波及しています。

 GDPベースの個人消費は昨年後半から相次いで襲来した台風や暖冬などで弱めの動きでしたが、1~3月ははっきりと増加に転じました。個別の指標を見ても、乗用車の新車登録台数は4月、5月と強めの動きとなっています。家電も薄型テレビやパソコンのほか、白物家電も含めて順調です。全国百貨店の売上げも1~3月に増加した後、4月も春物衣料の販売好調から増加しています。外食産業や旅行取扱額も今年に入って回復傾向にあります。以上から個人消費も底堅いと言えます。

 また昨年4~6月以来3四半期連続のほぼゼロ成長となる踊り場状況をもたらしたIT調整については、鉱工業生産における電子部品・デバイス工業の在庫水準を見ても直近4月はほぼ1年前の3~4月の水準まで戻しており、順調に進んでいると思います。輸出が予想外の伸び悩みを示していますが、設備投資や個人消費といった内需が好調な下で、IT調整が終了すると見られる年央以降は、踊り場を脱して再び回復に向かうというシナリオが引き続き妥当すると見ています。

(4)物価動向

 次に物価動向については、企業物価は鉄鋼や原油等の上昇幅が大きく、予想をやや上回る上昇となっています。

 日本銀行の金融政策の判断基準としている生鮮食品を除いた所謂コア消費者物価については、企業が人件費の抑制や生産性の向上により原材料価格の上昇を吸収していることに加え、米価格の反落や電気・電話料金の引下げなどの特殊要因もあり、展望レポートでは2005年度は前年比ゼロ%近傍と想定しました。このところの動きを見ると、小幅なマイナスの状況が続いています。2006年度については、これらの特殊要因の影響がなくなるため、前年比プラスに転じると予想しています。個人的な見通しですが、コア消費者物価は、2005年の年内にもプラスとなり、2006年度は年度を通してプラスとなる可能性が高いと思っています。

(5)下振れリスクとしての原油高

 展望レポートはこうした見通しに対して景気を上振れ、下振れさせるいくつかの要因を掲げていますが、この中でも特に注意したいのは原油高の動向です。

 米国の代表的な油種であるWTIは、先々週6月15日、ウィーンでのOPEC総会で生産枠の引上げが決定された後も上昇を続け、最近は60ドル近傍の過去最高値圏で推移しています。これは03年末までの30ドル程度と比較してほぼ2倍の水準です。また、日本の石油輸入の中心である中東産ドバイ原油も、東京市場において同様に50ドル台前半の過去最高値圏で推移しています。この原油高の背景として言われていることは、1)中国を中心として世界的に原油需要が増大していること、2)非OPEC諸国に期待される原油生産拡大が世界需要の伸びに満たないこと、3)世界的な原油生産余力が急速に縮小していること、4)石油精製、積み出しといった下流の設備も能力が限界に達していること、5)地政学的リスクが収まらないことなどです。

 長期需給要因として今後とも中国やインドなどの需要増加が見込まれる一方、可採埋蔵量は相当存在すると言われていますが、産油国やメジャーは過去1980年代における価格下落の経験から大規模な生産能力拡大投資には慎重な様子です。

 日本は1970年代の2回に亘る石油ショックで大きな影響を受けた後、原子力や液化天然ガス(LNG)などの利用拡大やトータルとしてのエネルギー利用効率の向上を進めたことにより相対的に原油価格上昇に対する抵抗力は強まっていますが、この原油高が継続し米国や中国など海外景気が減速すれば、その影響を受けざるを得ません。

(6)景気の持続性

 2002年1月に始まったバブル崩壊後3回目の景気回復は、既に3年6ヵ月を経過して現在昨年半ば以来の踊り場状況にありますが、年央以降は踊り場から抜け出して、デフレ克服に至ることを期待されています。

 厳しい構造調整によって3つの過剰を漸く克服した企業の姿勢にはこのところ好調な企業業績を背景に、雇用、設備投資に前向きの動きが見られていますが、基本的には慎重な姿勢が続いています。在庫管理技術の革新もあって生産や出荷の伸びに対して在庫水準は低目に抑えられています。こうした企業の慎重な経営姿勢は、今回の景気回復を緩やかではあっても持続的なものとする可能性が高いと思います。

 金融機関も同様に厳しい構造調整によって不良債権処理を進めた結果、総じて経営は健全化し、今後の発展に向けて収益力の強化方策を展開しています。このうち、企業向けとしては、貸出姿勢を積極化していることに加え、シンジケートローン、ノンリコースローン、中小企業向け無担保ローン、資産担保証券などの拡大に努めるほか、企業再生ビジネス、起業支援ビジネスなどにも注力しています。こうした金融機関の努力も企業経営を支援し、回復の持続性を支えるものと期待してよいと思います。

 今回の景気回復には3つの較差があると言われています。1)中央と地方の較差、2)製造業と非製造業の較差、そして3)大企業と中小企業の較差です。

 厳しい財政再建の途上にあって、総じて公共投資依存度が高く中小企業の多い地方の景気は、一部には元気な地方もあり、総体としても緩やかな回復基調にありますが、その較差は縮まっておらず、土地価格を見ても大都市を除く地域では低下が続いています。

 次に製造業と非製造業の較差については、今回の景気回復が輸出主導であったため、まず製造業において企業業績の改善や設備投資の増加が見られましたが、このところ非製造業においても企業業績が回復し、郊外型ショッピングセンター、物流拠点など設備投資の動きがみられています。

 最後に大企業と中小企業の較差については、全雇用の90%を占める中小企業の業況感や設備投資計画を見ると、それなりの改善を示しているものの、大企業との較差は依然として存在しています。

 中央、製造業、大企業における回復が、地方、非製造業、そして中小企業に波及していくことによって、今回の景気回復が本当に持続性あるものになると思います。高値更新を続ける原油価格もありますが、取り敢えず今週末7月1日に発表する日銀短観に示される経営者の景況感に注目したいと思います。

3.金融政策運営の現状と見通し

(1)量的緩和政策の仕組みと効果

 日本銀行は、4年余り前の2001年3月から、所謂量的緩和政策を実施しています。金融機関は法律等によって、無利子の日本銀行当座預金に一定の準備預金を積むよう義務付けられており、この準備預金所要額は現在、合計で6兆円ほどとなっています。この日銀当座預金は、準備預金のほかにも、銀行間での決済資金や運用上の余裕資金の一時的な預け入れに利用されています。日本銀行は金融機関に対し、国債などを担保に資金をオペで供給しますが、この資金もまず日銀当座預金に振り込まれます。量的緩和政策とは、この金融機関の当座預金残高が6兆円を超えて大きく積み上がるよう、大量の資金供給を行うというものですが、この目標額は段階的に拡大され、現在では準備預金所要額の5~6倍に相当する30~35兆円を目標に潤沢な資金供給を行っています。

 さらに、日本銀行はこうした量的緩和政策を、コアCPIの前年比が安定的にプラスとなるまで続けると約束しています。この「安定的にプラス」ということについては、2003年10月に、1)数ヵ月均して見てコアCPIの前年比がゼロ%以上で推移すること、2)先行き再びコアCPIの前年比がマイナスに戻らないと見込まれること、具体的には多くの政策委員の持つ、展望レポートの見通し期間におけるコアCPI前年比上昇率見通しがゼロ%を超えること、3)その上で、こうした条件が満たされたとしても経済・物価情勢を考えて総合的に判断していくものであるということを明確にしました。

 日本銀行は、量的緩和政策を採用した2001年3月までは、他の主要な先進国と同様に短期の市場金利を目標として金融調節を行っていましたが、長期に亘るデフレの中で短期の市場金利がほぼゼロ%まで低下した状況でさらに金融緩和を進めるため、他の先進国にあまり例を見ないこの量的緩和政策を採用しました。

 この間海外では2001年の9.11をはじめとするテロや、2003年のイラク戦争、国内では金融機関に対する公的資金の注入、株式や為替市場の急激な変動などが発生しましたが、日本銀行の量的緩和政策は金融システムの安定や景気の下支えに効果を発揮したと考えています。

 また、現在、景気は緩やかながら回復基調を続けていますが、このような時期、日本銀行が消費者物価に基づく約束を伴った量的緩和政策を堅持し、低金利が継続することは、デフレ克服に向けて従来以上の効果を発揮する可能性があると思います。

(2)札割れとなお書きの修正

 導入から4年を超える量的緩和政策の下で、金融機関が厳しい構造改革を続け、不良債権処理を進めてきた結果、日本の金融システムに対する不安感が大きく後退し、この4月には無事ペイオフ全面解禁が実施されました。こうして信用を回復した金融機関は短期金融市場で資金調達が容易になったこともあって、日本銀行がオペを通じて大量の資金を供給しようとしても、金融機関が十分に応札せず、資金供給予定額に応札額が届かないという所謂「札割れ」という現象が05年入り後から頻繁に発生するようになりました。こうした現象は、特に国債の発行や税金の納付などで民間の資金が減少する時期に頻発する傾向があります。

 ペイオフ全面解禁後も金融市場は落ち着いた状況が続いており、また金融機関の信用回復の結果としての札割れが継続していることを確認して、日本銀行は先月5月20日、金融機関の資金需要が極めて弱いと判断される場合には、一時的に当座預金残高が30兆円の下限を下回ることもありうることとしました。実際、税金の納付で大幅な資金不足となった6月上旬の2日間、残高は29兆円台に低下しました。

 この決定は、これまで続けてきた量的緩和政策を変更するものではなく、むしろ今後も市場のメカニズムを過度に損なうことを回避しながら量的緩和政策を円滑に継続することを目的としたものであり、金融市場もこの変更を平静に受け止めているようです。

(3)今後の金融政策運営など

 それでは、現在の量的緩和政策の枠組みを転換する「デフレ克服の時期は何時か」ですが、4月の展望レポートの見通しでは2006年度のコアCPIを僅かながら前年比プラスになるものと見込んでいます。何時デフレ克服の時期が到来し、現在の量的緩和政策の枠組みを変更する時期を迎えられるかまだ明らかでありませんが、2006年度にかけてその可能性は徐々に高まっていくと思います。それまでの間、日本銀行はしっかりと現在の量的緩和政策を堅持していく考えです。

 また、この枠組みを変更すべきかどうかの決定は、早すぎても遅すぎてもいけない訳ですが、私自身はどちらかと言えば再びデフレに戻らないことを重視して判断したいと考えています。

 なお、すでに政策決定会合において議論されている、量的緩和政策の枠組みの変更以前に資金需要の状況に合わせて現在の30~35兆円の目標を引き下げていくことについては、私としては、1)今後予定されているメガバンクの統合等の影響を含め、今後の資金需要の動向や、2)引下げがデフレ克服にマイナスの影響を及ぼすと受け止められる可能性などを慎重に見極めていきたいと考えています。

 今後、日本経済が緩やかながら持続性のある回復を続けていく中で、日本銀行の金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方などについて、可能な限り丁寧にご説明していくことも大切なことと考えます。市場の価格や金利等が需給や市場参加者の先行き予測を反映して形成されることは当然ですが、その円滑な予測形成の一助となるよう日本銀行の政策運営に関する判断材料を可能な限り提供していきたいと考えています。

 ペイオフ全面解禁という大きな節目を越えて、日本銀行の金融システム面の対応も、これまでの危機管理重視から、金融システムの安定を確保しつつ、金融の高度化を支援していく方向へと切り替えています。今後の考査・モニタリングにおいては、引続き金融機関の経営実態の把握に努め、所謂最後の貸し手機能の適切な発揮に備えることは勿論ですが、それとともに、リスク管理・経営管理の高度化を進め、収益力の強化に繋がる新たな業務展開を進める金融機関の努力を支援することに力点を置くこととしています。さらに、金融機関との対話の面で金融機関の負担を軽減する工夫を凝らすほか、日銀当座預金取引や決済システム等日本銀行が提供している金融インフラについても、利便性と運営の透明性を高めることに努めていく考えです。

4.旭川市、道北地区における地域振興

 最後に旭川市、さらには道北地区全体の経済の現状、先行きについて申し上げます。

 まず、当地の産業構造の特長は、1)第1次産業が全国比高めであり、北海道全体と比べても高い点、2)逆に、第2次産業、中でも製造業は全国比低めで、北海道全体と比べても低い点、3)さらに第2次産業のうち、建設業のウェイトが全国比で高く、かつ第3次産業では出先官公庁が多く、自衛隊もあるため、政府サービス関連の比重が全国比で高く、北海道全体と比較しても高い点にあります。このため、政府が政府支出や公共投資削減等を進める中で、その影響がストレートに出てしまう面があります。

 実際、最近の道北地区の景気情勢は、全国の景気動向を受けて一部に道外向けの出荷が増えている動きは見られるものの、公共事業の減少に伴う影響が一段と広がっており、残念ながら停滞局面が続いているようです。平成16年中の公共事業は前年比2割減のペースで推移しました。民間建築でも住宅やマンションを中心に平成16年中は前年比2割の落ち込みとなりました。個人消費も、大型小売店や家電販売、自動車販売のいずれも低調な地合いが継続しているようです。こうした中で、雇用環境も、旭川市での有効求人倍率こそ医療・福祉関係や大型商業施設での求人、或いは、道外の電機、自動車産業などの求人を受けて緩やかな改善を見せている部分もありますが、総じて見れば厳しい状況が続いているようです。

 一方で、こうした状況を打開する新たな動きについてもお聞きしています。

 観光面では、旭川市や当地の商工会議所などが総力を挙げて、韓国や台湾、香港からの国際チャーター便招致に向けて努力されており、外国人観光客は増加傾向を辿っていると伺っています。こうした中で、国際線ターミナルの新設などの旭川空港の整備が検討テーマに上がっていると聞いております。また、空港と旭川駅を結ぶための交通手段として、バスと鉄道列車を併用したデュアル・モード・ビークルの開発が進められており、これが当地の観光の目玉となることも期待されています。

 また、全国の動物園をはじめ、地域興しの関係者が注目する旭山動物園は、「行動展示」の魁であり、他に例を見ないユニークな取組みで全国から多くの観光客を集めています。既に旭川市内のホテルの客室稼働率は上昇しているとのことですが、さらに動物園グッズの製作販売や旭山動物園を組み込んだ観光ルート作りなどを通して、今後一段と地域の経済活性化に寄与していくものと思われます。

 さらに、産業界でも、当地で培われた食品加工や製材・合板、家具製作等における様々なノウハウを持って、全国へ展開し、さらには世界市場を視野においた事業展開を進められている企業もあるとお伺いしています。

 公共投資の減少に伴う当地経済への負のインパクトへの対応、或いは、当地の産業構造から来る問題への対処は、なお時間を要する難しい問題と拝察致しますが、以上のような行政、経済界をはじめとする前向きの動きが当地の経済活性化に繋がるものと期待したいと思います。

 本日は、これよりご出席の皆様から旭川市をはじめとした道北地区の状況についてお話を聞かせて頂き、併せて日本経済の将来展望、これを踏まえた日本銀行の金融政策へのご注文などを拝聴して参りたいと存じます。長らくのご静聴、感謝いたします。

以上