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第81回信託大会における総裁挨拶要旨

2006年4月17日
日本銀行

 本日は、第81回信託大会にお招き頂きまして、誠にありがとうございます。また、信託銀行の皆様におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、あつくお礼を申し上げます。

 わが国の景気は、着実に回復を続けています。米国や東アジアを中心に海外経済が拡大するもとで、輸出が増加を続けているほか、国内民間需要の面でも、高水準の企業収益を背景に設備投資の増加が続いています。こうした企業部門の好調は家計部門に波及しており、雇用や所得の改善を反映して、個人消費も増加基調にあります。

 先行きについても、高止まりを続ける原油価格やそのもとでの海外経済の動向などのリスク要因には引き続き十分な注意が必要ですが、いま申し上げたような生産・所得・支出の前向きの循環が働くもとで、わが国経済は、息の長い成長が続く可能性が高いとみています。

 景気が着実に回復を続ける中で、物価情勢も改善しています。生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比は、昨年11月にプラスに転じた後、足許では比較的はっきりとしたプラスで推移しています。このような経済・物価情勢のもとで、日本銀行は、先月、5年間にわたって継続してきた量的緩和政策を解除し、金融市場調節の操作目標を無担保コール市場におけるオーバーナイト物レートに変更した上で、これを概ねゼロ%で推移するよう促すことを決定しました。あわせて、金融政策の透明性を確保する観点から、「物価の安定」についての明確化を含め、金融政策運営の新たな枠組みを導入しました。

 日本銀行としては、こうした枠組みのもとで、経済・物価情勢の変化に応じて金融政策を適切に運営し、物価安定のもとでの持続的成長の実現に引き続き貢献していく所存です。

 次に、金融システム面について申し上げます。わが国金融システムは、不良債権問題を概ね克服し、安定性と内外の信認を取り戻しています。この間、信託業界におかれては、自らの経営の健全性向上にご努力されたほか、資産流動化などの面で、信託の仕組みや専門的知識を提供することにより、産業と金融の再生にも貢献されてこられました。

 今後のわが国金融システムにとっては、引き続きその安定を確保しつつ、わが国経済のさらなる活性化をしっかりと支えていくことが、ますます重要な課題となってきます。信託業界の皆様が、法制面の整備も活かしつつ、信託という仕組みを有効に活用することにより、顧客の多様なニーズに的確に応え、わが国における金融サービスの高度化をリードされることを期待している次第です。

 日本銀行は、現在、各種セミナーの開催などを通じ、リスク管理、経営管理の高度化を支援しています。こうした私どもの活動が、信託業界の健全な発展に些かなりとも貢献できれば幸甚に存じます。

 ご清聴ありがとうございました。

以上