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全国信用金庫大会における福井総裁挨拶要旨

2006年6月22日
日本銀行

 本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠に有り難うございます。信用金庫業界の皆様方におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

 わが国の景気は、着実に回復を続けています。具体的には、輸出や生産は増加を続けているほか、企業収益が高水準で推移するもとで、設備投資も引き続き増加しています。雇用者所得も、雇用と賃金の改善を反映して、緩やかな増加を続けており、そのもとで個人消費も増加基調にあります。

 景気回復局面に入って既に4年以上経過する中で、設備の稼働率は高まり、企業の人手不足感も強まっています。

 先行きについては、外需と内需、そして企業部門と家計部門がともに回復し、前向きの循環メカニズムが働く環境が整っているもとで、息の長い景気拡大が続いていくとみています。もとより、高騰を続ける原油価格やそのもとでの海外経済の動向など、景気に対するリスク要因については、引き続き十分注意を払っていく必要があります。また、金融市場では、このところ、世界的に振れの大きな展開となっており、その動向については、実体経済に与える影響を含め、注意深くみて参りたいと思います。

 なお、日本銀行では、全国各地に所在する本支店や事務所を通じて、地域経済の現状把握に努めており、この面でも、皆様方には大変お世話になっております。今後とも、地域経済の状況を含め、きめ細かく金融経済情勢を点検しながら、マクロ経済の先行きを的確に判断して参りたいと思います。

 物価面では、国内企業物価は上昇を続けており、消費者物価(除く生鮮食品)も前年比プラスで推移しています。先行きについては、国内企業物価は、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられます。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比についても、設備や雇用など資源の稼働水準が高まっていく中で、プラス基調を続けていくと予想されます。

 次に、最近の金融政策運営について申し上げます。

 日本銀行は、3月8日、9日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、量的緩和政策を解除し、金利政策に移行することを決定いたしました。現在の金融市場調節方針は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、概ねゼロ%で推移するよう促す」というものです。

 同時に、日本銀行は、金融政策運営の新たな枠組みを導入しました。そのポイントを申し述べますと、第1に、日本銀行としての物価の安定についての基本的な考え方を整理するとともに、「中長期的な物価安定の理解」を示すこととしました。これは、金融政策運営に当たり、現時点において、中長期的にみて物価が安定していると政策委員が理解する物価上昇率であり、消費者物価の前年比で表現すると、0~2%程度となります。第2に、先行き1年から2年の経済・物価情勢の点検と、より長期的な視点を踏まえつつ金融政策運営に当たり重視すべきリスク要因の点検、という2つの「柱」に基づいて経済・物価情勢の点検を行うこととしました。第3に、こうした点検を行った上で、当面の金融政策運営の考え方を整理し、定期的に公表していくこととしました。

 日本銀行としては、この新たな枠組みのもとで、透明性の高い形で、適切な金融政策運営を行い、物価安定のもとでの持続的成長に貢献して参りたいと考えております。4月28日に公表した展望レポートでは、2つの「柱」に基づいて経済・物価情勢の点検を行い、先行きの金融政策運営について、無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間の後も、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと判断しました。そうしたプロセスを経ながら、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えています。日本銀行としては、こうした方針に基づき、引き続き、物価安定のもとでの持続的成長に向けて、全力で取り組んでいく所存です。

 次に、金融システム面について申し述べます。

 わが国金融システムは、全体として不良債権問題を克服し、安定性と信認を回復しています。信用金庫の本年3月期決算をみると、多くの先において、不良債権比率や信用コストが一段と低下しています。

 今後の信用金庫経営においては、金融経済環境の変化を踏まえつつ、金融業務に付随する様々なリスクを適切に管理していくことが一段と重要になってきています。なかでも、金融市場の状況が変化する中で、金利リスクや、流動性リスクを適切に管理していくことは、多くの信用金庫にとって留意すべきポイントと考えられます。また、信用リスク管理に関しては、将来に亘る信用リスクを適切に見極めるとともに、地域における企業再生の面でこれまで培ったノウハウを活かして、早めの対応を心がけていくことも重要であると思います。

 日本銀行では、現在、実地考査やオフサイトモニタリング、本支店における各種セミナーの開催などを通じ、金融機関のリスク管理、経営管理の高度化を支援しています。こうした私どもの活動が、信用金庫業界の皆様方の経営や業務の実情に応じたリスク管理体制整備の推進に、些かなりとも貢献できれば幸甚に存じます。

 最後となりましたが、信用金庫業界がますます健全に発展され、中小企業の活動や地域経済を引き続き適切に支えていかれることを祈念いたしまして、私からの挨拶とさせて頂きます。

 ご清聴有り難うございました。

以上