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全国信用組合大会における総裁挨拶要旨
2006年10月20日
日本銀行
はじめに
本日は、全国信用組合大会が盛大に開催されましたことを、心よりお慶び申し上げます。
信用組合の皆様におかれましては、地域や顧客に密着した金融機関として、その発展に貢献してこられました。また、皆様には日頃から、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。本席をお借りして、あつく御礼を申し上げます。
私からは、最近の経済・物価情勢や金融政策運営、ならびに金融システム面での課題に関しまして、私どもの考えを申し述べ、ご挨拶に代えたいと存じます。
経済・物価情勢と金融政策運営
わが国の景気は、緩やかに拡大を続けています。世界経済が拡大する中で、輸出は増加を続け、高水準の企業収益を背景に、設備投資も引き続き増加しています。雇用面では、新卒採用を含め、雇用者数が堅調に伸びています。先日公表された9月短観においても、企業の業況感が良好な中、企業収益や設備投資は増加を続ける計画であり、また、人手不足感が一層強まっている様子が窺われています。労働需給が引き締まり傾向を続ける中で、緩やかながらも雇用者所得が増加しており、個人消費も増加基調にあります。こうした内外需要の増加を背景に、生産は増加を続けております。先行きも、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、日本経済は息の長い成長を続けると考えられます。
物価面では、高騰を続けてきた国際商品市況が最近反落していることから、国内企業物価は、当面、上昇テンポが鈍化していくとみられます。一方、消費者物価(除く生鮮食品)は、足許、プラス基調で推移しており、マクロ的な需給バランスが需要超過方向で推移していくとみられることなどを踏まえると、先行きも、プラス基調を続けていくと考えられます。8月に公表された指数の基準改定は、事前予想に比べ下方改訂幅が大きかったことが注目を集めましたが、物価を巡る基本的な判断に変更を迫るものではありません。
このように、わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を続けていく可能性が高いとみられますが、米国など海外経済の動向や、原油をはじめとする国際商品市況の動向などには、引き続き注意を払っていく必要があると考えています。
金融政策運営につきましては、日本銀行は、7月に、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導水準を、概ねゼロ%から、0.25%前後に引き上げました。今後の政策運営に当たっては、経済・物価情勢を丹念に点検しながら進めていく所存ですが、引き続き、先ほどご説明した見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば、政策金利の水準の調整は、経済・物価情勢の変化に応じて、ゆっくりと進めていくことになると考えています。
金融システム面の課題
次に金融システム面について申し述べます。
経済社会が変革期を迎えている今日、信用組合の皆様方には、変貌し多様化する顧客の金融ニーズを的確に捉え、協同組織金融機関の立場から、適切に対応していかれることが、以前にも増して期待されていると申せましょう。
こうした期待に応えていくうえで、今後予想される金融経済環境の変化を踏まえつつ、金融業務に付随する様々なリスクを適切に管理していくことが一段と重要になっています。なかでも、金融市場の状況が変化する中で、金利や流動性に関するリスク管理の重要性が高まっています。
また、経営体力や営業基盤を強化していくことも、期待される役割を十分に果たしていくために重要な課題です。近年、こうした観点から、金融機関が提携や経営統合を図る動きがみられますが、こうした自主的な経営判断も選択肢の一つと考えられます。
信用組合の皆様方は、これまでも、個人や中小企業向け金融の分野を中心に、重要な役割を果たしてこられました。今後も将来を見据えた経営基盤の強化や、業務内容に応じたリスク管理態勢面の整備を進めつつ、中小企業の活動や地域経済の活性化に引き続き適切に対処されていかれることを期待しています。
おわりに
最後に皆様信用組合業界の今後の一層のご発展を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。
以上