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中央銀行研究会報告書について
1996年11月12日
日本銀行
- 本日、中央銀行研究会において、「中央銀行制度の改革」と題する報告書が取りまとめられ、首相に提出された。この報告書は、21世紀の金融システムの中核として相応しい中央銀行のあり方に関して、基本的な指針を示すとともに、日銀法改正を始めとする中央銀行関連諸制度の今後の改革の方向性も明らかにしており、日本銀行としても、これを重く受け止めるべきものと考えている。7月以降、精力的に審議されてきた鳥居座長はじめ研究会の委員の方々に対して、深く敬意を表するとともに、改革の指針を頂戴した当事者として、厚く御礼申し上げたい。
- 日本銀行としては、研究会の報告書で示された基本的な指針に即して、今後、日銀法をはじめとした諸制度の見直し作業が早急に具体化していくことを強く希望している。こうした中央銀行制度の具体化に関しては、今後の検討に委ねられている論点もあるが、中央銀行研究会によって示された、「独立性」と「透明性」という2つの視点は、十分尊重されるべきものであると考える。日本銀行としては、こうした検討作業に対して、積極的に貢献していく方針である。
- 研究会報告書にも触れられているように、日本銀行には、制度面の整備にとどまることなく、日本銀行自身が適切な政策・業務運営に向けて不断の努力を重ねていくことが求められている。そうした問題提起をも踏まえ、日本銀行では、政策・業務運営のあり方について、別紙の項目に即して、見直しを行っていくこととし、その旨本夕の政策委員会で決定した。
- 日本銀行制度のあり方については、わが国の経済的・社会的環境と無縁ではあり得ないが、同時に、市場化・国際化時代に相応しい中央銀行制度としていくうえでは、最近の先進主要国における中央銀行制度改革の理念や考え方と平仄のとれたものとしていくことも、また重要である。
日本銀行としては、以上のような観点を踏まえ、この機会に、国民やマーケットからより高い信頼を勝ち得ていくため、制度・運用の両面にわたって、強力かつ大胆に改革を進めていく決意である。
関係各位のご理解とご協力を賜りたい。
以上
(別紙)
日本銀行の政策・業務運営面での見直し
日本銀行では、中央銀行研究会での提言をも踏まえ、今後の法制度面の整備作業と並行して、以下の諸点に関し、運用面の見直し作業に着手することとする。いずれも来年春頃までを一つの目途として、取りまとめを行うよう努めることとする。
(1)政策委員会における金融政策決定会合の定例化
公定歩合の決定や金融調節の基本方針の決定など、金融政策の基本方針を決定する政策委員会の開催を定例化する。
金融政策決定会合の定例化の目的は、政策決定のタイミングを巡る市場の無用の混乱を防止することにあるが、他方、政策変更の機動性を損なわないよう配慮する必要があり、開催頻度等具体策については、わが国金融市場の実情や諸外国の事例を踏まえて、検討を進めていく。
(2)金融政策決定会合の議事要旨の公表
上記の定例化された政策委員会については、政策決定過程の透明性を高める観点から、議事要旨の公開を行っていく。
開示する議事要旨の具体的な様式等詳細については、上記(1)の検討とあわせ、今後、具体的な検討を行っていく。
(3)考査
金融機関に対する考査について、研究会の報告書では、業務内容の明確化の観点から、法律上の根拠規定を設けることが望ましいとされた。
考査は、金融機関の協力を前提として行うものであり、その法定化によっても基本的性格はなんら変わるものではない。考査の内容については、行政の検査との無用の重複を避けるとの研究会報告の趣旨をも踏まえつつ、金融市場の高度化・複雑化に十分対応していけるよう、改めて考えていく。
(4)本行の決済サービスの提供のあり方
銀行券・日本銀行当座預金という支払い完了性を有する決済手段が円滑に機能するよう、決済システムの効率的かつ円滑な運営を図っていくことは、金融システムの安定に関する中央銀行固有の役割である。
この点、日本銀行当座預金を中核とするわが国の決済システムにおいて、さらにリスクを削減していくため、即時決済の導入を含む新たな改善策について、今後、市場関係者とも協議していく。
(5)業務・組織運営
経済の市場化・国際化といった環境変化に対して、日本銀行が適切に対応していくためには、業務面や組織運営面でも、柔軟な対応を図っていくことが求められる。そのためには、研究会報告書でも指摘されたとおり、運営の自主性が担保されることが極めて重要である。
その一方で、日本銀行の業務・組織運営の効率化・合理化については、不断の努力が求められていることも十分認識している。日本銀行としては、これまでも、業務・組織運営の効率化・合理化を推進してきたが、この点、今後とも、一層の努力を重ねていく所存である。また、本行職員の規律のあり方等に関しても、改めて具体的に検討を進めていく。
(6)情報化時代への対応
政策運営の考え方については、これまでも様々なルートを通じて、積極的に説明してきたが、市場化・情報化時代の中央銀行には、従来にも増して、そうした努力が求められる。日本銀行としては、上記(2)の議事要旨の公開を進めることなどにより、金融政策運営の考え方を説明する仕方について、さらに検討を深めるとともに、最近における情報通信技術の発達を背景とした、インターネット等の新たなメディアの活用についても情報の受信・発信両面で工夫していく。
以上